会社改革が進まない理由
現場は効率化を求めていない!?
業務の効率化を目指そうとしたとき、たいていその改革は現場に拒絶されます。たとえば、当社においても、ペーパレス化を進めようとしたり、いくつかの従来の事務ステップを省こうとしたりしても、現場からは強い抵抗がありました。
彼らはもっともらしい理由を並べ、従来の仕事を変えることを嫌いました。たとえば、事務ステップを省くと、こういう問い合わせが来た時に困る、という理由を伝えてきたりします。しかし、実際のところ、そのような問い合わせはどれくらいの頻度か?と聞くと、数年に一回というような頻度だったのです。
数年に一度の問い合わせのために、毎日何時間もかけて仕事をする。これもどうかと思い、その仕事をやめるよう指示しましたが、しばらく目を離すとまた元の通りの仕事に戻していました。そして、忙しいといいながら残業を繰り返すのです。
自分の状況は変えたくない
私にしてみれば、仕事が楽になって残業がなくなることがわかっているのに、なぜ効率化を図らないのか、と不思議でした。けどおそらく、彼らには彼らのなにかしらの目標があったのではないかと思います。
そういった、目標を「裏の目標」となずけたのが、ハーバード大学のロバート・キーガンとリサ・ラスコウ・レイヒーです。
組織が変わろうとするとき、その方向には進まないであろう行動をとることがあります。その行動をとる以上は、その結果何かしらのメリットを受けるという思い込みがあるからです。
例えば冒頭の当社の経験でいえば、仕事を効率化しないことで社員がメリットをうけているのです。それは、時間の空白を埋めるとか、数年に一度の問い合わせに対応することで慌てふためくリスクを回避しているとか、残業していることで上司に認められたがっているとか、何かしらの裏の目標を持っているからこそそこにとどまろうとする、というのです。
社員の恐怖心を取り除く
やはり心理的安全性
こういった、組織の変化を妨げる要因は会社の仕組みやルールの問題というよりも、そこに働く人の内面にあることが多いと思われます。ですから、一人一人の内面を考えずとにかく形式的な改革を推し進めてもうまくいかないことが多いのです。
大企業であれば、会社からの評価を損ねるという恐怖から人は動かざるを得なくなりますが、中小企業の場合そういった統制感は比較的マイルドになります。そうすると、変化することに対する内面的な反発の方が色濃く出てくることになります。
それを防止するのは、一つは一人一人の感情に配慮することなのですが、そこまでできないという場合、そもそも社風を変えてしまうということになると思います。ここでまた、心理的安全性という言葉が出てきます。それが確保すれば、変化への抵抗も少なくなるからです。
人は変化への恐れを持っていますが、それは根源的には変化することで慣れないことへ対処する(あるいはなれないことで失敗する)リスクを常に意識しています。そのリスクが軽減されれば、比較的軽やかに変化できる可能性をはらむのではないかと思うのです。
失敗を責めない、むしろ推奨する企業文化の醸成が大事なのかもしれません。
