積極的にかかわるというより会社から手を放す
自主性の足りない後継者?
経営者のお話を伺っていると、最近よく出てくるのが後継者の話。息子や娘が会社に来ているのだけれど・・・という話があったり、子供は継ぎたくないと言われたという話があったり、状況は人それぞれ。
候補がいればそれはある意味ハッピーで、その候補探しにもなかなか苦戦されるのが中小企業の実情といえるかもしれません。なぜ、後継者候補が見つからないのでしょうか。それはある意味、社長がしっかりしすぎているからではないでしょうか。
ある社長が病気で倒れた際に起きた事
私の知人である社長が、ある日病気で倒れました。治療には3週間ほどの入院が必要でした。社長は仕方なく、ほぼ1か月会社を留守にすることになりました。
その時、驚くべきことが起きました。会社のなかでは、まず社長に心配をかけまいと、社長への連絡は行わないという事を社員全員で決めました。そして、一日に一回、代表が社長に今日一日あったことを報告するという流れを作りました。
どうしても社長に頼りたいシーンはあったものの、社員たちは一致団結し、社長に不測の連絡を取ることなくその一カ月を乗り越えました。
結果として、特段の問題が発生するもなく、順調に、一定程度の緊張感をもって、会社は運営されました。この時に社長は感じたそうです。「いつも、自分が口出ししすぎるから社員が育たないんだ」と。
社長がいないほうが社員は育つ!?
継がせる覚悟
事業承継においては、どちらかといえば継側の人間の資質や覚悟といった部分に問題がある、と一般的には考えられがちです。しかし一方で、継がせる側の覚悟というのもかなり大事になってきます。自分が持っている社長としての特権やメリットを捨てる事でもあり、会社の中に自分の居場所がなくなるという事に対する覚悟でもあり、実は継がせる側の覚悟のほうが下手をすれば大きいくらいです。
それを決めた社長は、社員が本気になるために会社に一切顔を出さなくするとか、ある社長はあえて世界一周旅行に出かけたりもしました。
やりすぎという声もありそうですが、社長という役割はマニュアル化できる仕事ではありません。だからこそ自覚と経験が必要なのですが、自覚をさせ、経験を積ませるには、そこに社長の存在はないほうが良いことが多いのです。
後継者が育たないという社長は多くの場合、自分が会社とのかかわり方を変えていないケースがほとんどです。だとすれば、社長から振舞を変えていく必要があるのではないでしょうか。
