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データを圧縮する怪
セキュリティーが担保されない作業
皆さんも、メールのやり取りをされる際、こんな経験をされたことがあるかもしれません。先方からの添付ファイルは圧縮ファイルで、それを解凍し、中身を見るにはパスワードが必要とされているものがあります。別のメールでパスワードは送られてくるのですが、これに何か意味があるのでしょうか?
もちろん、セキュリティを強化したい気持ちはわかります。しかし、同じメールアドレスに暗号化されたファイルと、それを解凍するパスワードが送られるのであれば、まったくセキュリティの意味をなしていないのではないでしょうか。
実はシステム屋さんの間でもそういった議論がなされていて、こういったファイルの送付方法でセキュリティが高まる事実はない、という結論を私は耳にしています。
なぜそんな面倒をするのか?
一人のビジネスパースンとして、なんとなく「パスワードが設定されている」時点で、セキュリティが高いような気がするというのはわからないでもありません。だから、この方法は日本のビジネス界では割と歓迎されて、自働で暗号をかけてパスワードを別便で送付するシステムもあるようです。
だから送る側はまったく面倒がないのでしょう。しかし、わざわざ優勝のシステムを入れてまでそのようなことをするのはなぜでしょう。私は二つ理由があると思っています。一つは、合理的な理由がなく、「なんとなくセキュリティ上よさそうだから」という事での導入。もう一つは、アリバイ作りです。当社はセキュリティに敏感で、お金をかけて対策をしていますよ、という自己主張です。

データの受け取り手がうける面倒
こういったデータを受け取ると、わざわざ別のメールのパスワードのコピーをしてきて、そのファイルを開く、という面倒をやらなくてはなりません。一度開いて終了ならまだしも、そのファイルを開くたびにパスワードをコピペして入力しなければなりません。この労力は小さいとはいえ、その小さい労働の積み重ねが、働き方をむしばんでいるのですから、考えようによっては重罪と言えるかもしれません。また、世間で言うコンプライアンス意識の向上は、一方でこういったアリバイ作成主義で仕事の生産性をスポイルしてしまう可能性があります。これは国全体としての損失ともいえるかもしれません。
大事なことはきちんと「考える」こと
アリバイ作りと割り切ることも時には必要
とはいえ、様々な仕事におけるかかわりの中で、唯我独尊を決め込むわけにはいかないこともあるでしょう。そうなると、実利はなくとも「やってる姿勢」を見せることが大事なこともあります。ただそれも、アリバイ作りとしてやむを得ずやる場合と、それが正しいと信じ切ってやる場合とではその関わり方が変わってくるのではないかと思います。
いずれにせよ、どういった姿勢で一つ一つの作業にコミットしていくかは、自分たちで意識すべきものだと思います。その感覚を持って、自らが考え、選択していく、という意識は会社として重要ではないかと思います。
何かをせよと言われた時に、それに何の考えもなしに従うのか。それとも、それが意味することはどんなことで、さらに効果的な方法はどのようなものがあるのかを考える習慣は大事なのではないでしょうか。