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社長の思いは伝わらない!?
熱は広がると奪われる
起業家を熱く熱せられた鉄の球だと仮定しましょう。強い思いがその球を熱し、暑く輝かせています。これは起業家魂を見える化したものです。きっと創業社長は強い思いをもって起業し、その思いを世の中に広めたいという一心で昼夜を問わず、私財をなげうって仕事に没頭してきたことと思います。
そうやってだんだんと組織が大きくなってくると、その熱量というのは伝わりにくくなってきます。はじめのコアメンバー数名のうちは、熱い思いをある程度共有できたはずなのに、人が増えていくほどクールになっていく。
たとえば、ワタミの渡辺美樹さんは、自分が参考にしてきた成功法則があり、目標をもって一定程度の負荷を自分に課して仕事をすることで、自分を伸ばすことを知っていたのだと思います。はじめのうちはその思いを理解できる人が多かったわけですが、その組織が大きくなるにつれブラック企業と言われるようになってきました。
熱伝導の物理法則と企業経営
いきなり物理の話が出てきて驚かれるかもしれませんが、実は、人の情熱も物理の法則に似通っているように思います。冒頭お話しした「熱い鉄の球」を水に入れるとどうなるでしょうか?その熱は、周囲に伝達し、水温を上げます。しかし、鉄の球の温度は下がります。言ってみれば、エネルギーの密度が拡散し、全体の温度は下がってしまう状態だと思います。
実は組織にはこれと同じことが起こっているような気がするのです。熱した玉のような起業家魂を持った起業家の熱は、社員を得ることでその熱を社員に伝えようとします。すると社員は少し、その熱で動かされますが平均温度は下がってしまいます。創業当初の熱さが醒めていくというのでしょうか。
そうすると今度は、冷めた温度のまま会社という組織を動かそうとすることになります。熱を原動力とするのではなく、水の流れをコントロールしましょう、ということでしょう。それは例えば規則や、文書における管理。いわゆる大企業病、といった状態と言えるかもしれません。

熱を保ち続けるためには?
太陽のように燃え続けるリーダー?
では温度を覚まさないためにはどうすればいいかなのですが、リーダーが太陽のように無限の熱を発しつづければいいのでしょうか。それも現実的ではなさそうですし、水は蒸発してしまいそうです。そういえば、社員がみんなついてこなくなった…という話もしばしば耳にします。
方法論としては、それぞれの分子が熱を発するような形が作られれば理想かもしれません。リーダーの熱を伝導させるのではなく、メンバー各々に熱源を持たせる、ということです。
それを可能にするのが、夢の共有と言えるかもしれません。
リーダーだけがワクワクできる夢では意味がない
多くの場合、起業というのは、リーダーが勝手にワクワクして、勝手に始めるものです。当初集まったメンバーはいざ知らず、それなりに会社の体をなし始めてから入社する社員との温度差はけっこうあります。そこに、リーダーの夢を植え付けようとするとやはりけっこう難しい部分があります。そこで考えたいのが、社員一人一人の中にあるものを導き出すということ。
それは例えば、本人が気づかなかった彼自身の才能であったり、能力であったり。それを引き出してくれる環境があるとすれば、多くの人はそこに忠誠心を持つ可能性は高いと考えられそうです。
そういったときに、リーダーの自分本位であり続けることは場合によってはリスクにもなりえる状況かと思います。相互の関係を意識し始める規模になってきたときには、今までの「太陽のような熱を放出し続ける」マネジメントからの転換を図る時期が来るのではないかと思うのですがいかがでしょうか。
