「いまさら聞けない」話
ときおり信じられない動きをする社員
多くの社員をまとめていると、時折、理解に苦しむ動きをする社員はいたりはしないでしょう。考えられないような失敗を起こすとか、ありえない行動を起こすとか。こういった場合、もしかしたら、仕事の基本的な知識が欠落している可能性があります。
よくよく考えてみれば、仕事(特に専門分野)の基本的な知識やスキルは、一度覚えると、その後見直す機会はなかなか訪れません。本人もわかったつもりになっていることも多く、彼らの持っている基礎知識が、現実のそれと乖離していることは、意外と多いのではないでしょうか。
中途採用社員の「常識」
特に、「即戦力だから」と中途採用した業界経験者は気を付ける必要があります。まったく違う環境で、まったく違う基礎知識を学んでいることがあります。表面上は同じでも、その裏にある意味がまったく違うものであることはけっこう多いと思います。
たとえば、メーカーと販売会社である場合、商品を通してみる視点が違います。メーカーは、「作った人」としてその商品を見ていることが多いようです。その商品が生まれる背景、狙った顧客層、自分たちのもつ特徴。これらは、「それを意図して作った」という過去におけるメーカーの思考がベースとなっています。
一方販売会社は、顧客の反応を直接的に聴いているだけに、商品の欠点をしっていたり、顧客によってどのようにその商品を活用すべきかを知っています。
メーカーも販売会社も、知っている商品のスペックは同じでも、バックグラウンドが違うとその知識の偏り方は圧倒的に違ってきます。

つねに語る
エビングハウスの忘却曲線
受験勉強などのときに、塾から「エビングハウスの忘却曲線」について説明を受けたことはないでしょうか?それは、記憶に関する研究で、こんなデータを残しています。
- 20分後には42%を忘却し、58%を保持していた。
- 1時間後には56%を忘却し、44%を保持していた。
- 1日後には74%を忘却し、26%を保持していた。
- 1週間後には77%を忘却し、23%を保持していた。
- 1ヶ月後には79%を忘却し、21%を保持していた。
つまり人の記憶は、翌日になれば7割以上を失うというのです。
社員もまた、リーダーの言葉をいつまでも覚えているわけではありません。だから、
あの時にこういったじゃないか!
と言っても社員は覚えていないのです。
ではどうすればいいのか?
そこで大事なのが「繰り返し」です。リーダーの方針説明も、長い言葉はいりません。結論だけを短く、毎日、しつこく伝えます。社員が覚えて、行動を変える前に、リーダーが飽きてはいけません。
一方で、基礎知識もどうようで、常に短い時間でチェックする機会を設ける必要があります。例えば会議前や、朝礼前に、ちょっとした学びの時間を採ります。場合によっては、その都度、教師役を社内で持ち回りにするのもいいでしょう。ここでやりがちなのは、2時間とか、90分の勉強会をやろうとするパターン。準備も大変で、社員の耳には結局何も残りません。
短時間(たとえば10分~長くても30分くらい)で、ワンポイントレッスンをします。そこで疑問や、自分の思い込みとのズレを各自発表してもらいます。そういった流れの中で、「いまさら聞けない」ことをあえて取り上げてみるのです。すると、意外なくらい基礎知識の欠如やズレに気付くことがあります。
またベテランの場合、30年前の基礎知識からほとんど更新されていないこともあるのでご注意を。
