社員に経営者意識を持ってほしいと思うのですが、どうすればいいですか?(3)

シリーズになっている記事も今回で三回目。
前回の記事については、以下をご参照ください。

社員に経営者意識を持ってほしいと思うのですが、どうすればいいですか?(1)

社員に経営者意識を持ってほしいと思うのですが、どうすればいいですか?(2)

社員はどこへ向かえばいいのか?

しっくりこない方向性

いろんな会社があるので何とも言えませんが、たいてい、組織について問題を持っておられる会社の場合、従業員が働く目的は「お金」のためである、となっていることが多いと思います。

あたりまえと言えば当たり前です。会社と従業員の契約は、一定時間の労働とそれに見合った賃金を支払うというもの。その契約の履行に際しては、従業員はとりあえず会社から指示されたことを指示されたようにすればいい。それ以上でもそれ以下でもないわけです。

しかし、たぶん、会社としては「単にやらされ仕事をこなして終わり」ということで終わらせたくないのが本音でしょう。せっかくだから、楽しく前向きに仕事をしてほしいと思うし、そこに強い責任感を持ってほしいという思いがあるのはよくわかります。

ただ重要なのは、雇用契約という前提においては、お金と時間と労働の契約です。ここは重要なので忘れないようにしておいてください。

やりたいか?やりたくないか?

そこで、そういったドライな契約を越えて、感情的に何かをやろうとするとき、やはりそれが進んでやりたいと思えるものでなければなりません。それは仕事の内容かもしれませんし、社内の人間関係かもしれません。会社を「ただ働いてお金をもらう場所」から、何かしら違う空間に変化させる必要が出てきます。

その時にヒントになりそうなのは、「ゲーム」です。
「ロール・プレイング・ゲーム」略して「RPG」というのはご存知でしょうか?具体的な名称を上げれば、ドラクエ(ドラゴンクエスト)や、FF(ファイナル・ファンタジー)あたりが老舗の有名どころです。他にもたくさんありますが、こういったゲームの基本は主人公となるキャラクターを操作し、異世界に旅立ち、お宝をゲットする(あるいは世界の危機を救う)といった物語があります。

多くの人は、このゲームに夢中になり何十時間もの時間をゲームに費やしました。決してご褒美をもらえるわけでもなければ、報酬をもらえるわけでもないのに、です。やってみるとわかるのですが、けっこう大変です。コツコツと弱い敵を倒して、お金をためて、装備を買う。そして経験知でレベルアップする。せっかくやってきた道のりが、あるキャラクターとの対決で振出しに戻る的な仕打ちさえあります。それでも人は夢中になるのです。

そこにあるもの

報酬ももらえないゲームになぜ人は夢中になるのでしょう。腰を痛め、巻き肩になりながら熱中する理由は「成長」にあると、私は考えています。キャラクターが成長した姿(今苦労している敵を一撃で倒せる成長したキャラクターや、衣装や身に着けた魔法など)を見たくてやっているんだと思います。そして次々と現れる新たなステージの世界観。人は「成長」と「新しい世界」を求めていると、割と苦労もいとわないもののように感じます。

会社で社員を自発的に動かしたいなら、こういった要素を社内に取り入れていけばいいのです。

Stefan KellerによるPixabayからの画像

成長を実感できる仕組み

人事評価制度もその一つ

多くの場合人事評価制度というのは、マイナス点をつけるためにあるようなイメージがついています。出来るようになったことよりも、出来るようになれ、というメッセージが強すぎます。だから従業員としては、責められているように感じます。これは、学生時代の通知表を思いだすとわかりやすいと思います。多くの学生は、通知表がキライだったのではないでしょうか。(私は嫌いでした)自分を評価されていることがどうも気持ち悪いし、どうせ悪い評価でしょ、と思うとウンザリしてしまいます。

日本の教育の中では「デキないところ」に焦点を当てがちですが、出来るようになったことに焦点を当てるというのは社内の雰囲気を改善するのにはとても大事なことだと思います。形式建てた人事評価制度である必要はありませんが、この1か月、四半期で、「何ができるようになったか」をたたえ、喜ぶ習慣は大事だと思います。

誰にも口出しされない責任

子供はよく「口出ししないで」といいます。実際に口出ししなければ子どもは自分なりに何とかやり遂げようと頑張るものです。たいていはその結果を見る前に、親は口や手を出してしまうのですが・・・。しかし、そうしてしまうことで本人の自立心も自尊心も傷つけてしまい、子ども自身は、「自信」を失っていきます。自分はどうせ一人ではなんにもできないんだ、と。

これ、大人になっても同じです。社員の一つ一つにいちいち文句をつける上司がいますが、これ、アウトです。いわばマウンティング行為のようなものです。すると、社員の責任感もダダ下がりです。なぜなら「自分じゃなくて、上司の指導でやったから」という言い訳を持つからです。

そぅやって部下を「成長させない」職場はけっこう多いものです。

お互いが相手を知り賞賛しあう

そして本人が「成長」を実感するには、周囲が彼の成長を知る必要があります。それはすなわち、社員同士がそれぞれの人となりを知る事が前提となります。Aさんは、〇〇は得意だけど、△△な仕事は苦手だな、とか、Bさんは単純作業をコツコツと続けることは誰よりも優れているけど、応用問題をやると苦しんでるね、とか。

こういった社員同士の関心を相互にもたせるために、たとえば、一緒に食事をとるようにするとか、朝のコーヒーを共にするとか、何かしらのコミュニケーションの時間を持つことは一つの方法としてはアリじゃないかと思います。

そうやってお互いがお互いに関心を持ち始めると、それぞれの社員の責任感や自主性が育つ可能性が高いと言えます。

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

やっぱり楽なことではない

前回のコラムでも書きましたが、こうやってまとめてみると、社員に責任感を持たせ、経営者のように振る舞わせえるというのはけっこう大変です。本来は、経営者が楽になるためにそういったことを言いだすケースが多いと思いますが、むしろ、当面は経営者は非常にストレスフルな状態に陥ることがあります。

そういった負荷が、経営者の人間性を一歩押し上げる役割を担ってくれるのですが、重要なのはそれを受け入れる経営者の覚悟なのかもしれません。

これは私の個人的な考え方ですが、会社というのは経営者にとっても、従業員にとっても「大人の学校」と言えるのではないかと思います。大人になると一定の負荷をかけて自分の能力を試す機会はなかなか持ちませんが、会社を通じての社会とのかかわりの中で、私たちは様々な学びを経験しているのではないかと思います。

せっかくなので、経営者という学びを楽しむ方向で考えてみてはいかがでしょうか。

 

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