前回の記事では、いくつかのご提案を差し上げました。
社長自身が、自分が一番であることを捨て、
社員に任してしまいましょう、
というお話です。
詳しくは、以下のリンクからご覧ください。
今回はもう少し突っ込んで考えてみましょう。
目次
社員に任せてしまえば失敗するかも!?
社員を育てることにコミットした社長の憂鬱
『マシュマロ・チャレンジ』という心理実験というか、企業研修をご存知でしょうか。簡単に言うと、パスタの乾麺、粘着テープ、ひも、マシュマロと言った道具が用意されています。これらをうまく組み立てて、頂点にマシュマロがある構築物を作るというプロジェクトをやってもらいます。目指すは「最も高い塔」を作ることです。制限時間は18分。
これを4名一組のグループで実験しました。MBA(経営学修士)、CEO、普通の社会人、幼稚園児・・・といった人たちのグループです。
結果、最も高い塔を作ったのは誰だと思いますか?実は、幼稚園児のグループだったのです。逆に最もよくない結果は、MBA(経営学修士)ホルダーだったそうです。その違いは明確で、幼稚園児は考えも計画もなく、ただいろんなパターンを”試して”みた。一方、MBAホルダーは様々な検証と計画を行った結果、一度の工作で時間切れとなったそうです。
人は失敗からしか学べない
この『マシュマロ・チャレンジ』からわかることは沢山ありますが、現実的な問題として「やってみなければわからない」ことが多いので、「とりあえずやってみる」チャレンジ精神が大事だと考えられます。だから、あまり物事を論理的に考えられない幼稚園児が勝てたのではないか、と考えられます。あれこれ考えるよりもやってみる。そしてやった結果上手くいかなければ、方向を修正する。これが人や組織が学び、変化していく、もっとも確実な方法と考えられそうです。
会社においても、社員が自ら考え動く組織にしようとすれば、彼らの「失敗」を受け入れる組織を作る必要があります。なぜなら、失敗を恐れていては、MBAホルダーのように「結果が出せない」からです。
経営者としては、「結果」も、「自律性」も求めたいはずです。であれば、一定期間は、「学習期間」として失敗を受け入れる、いえ、失敗を奨励する文化の創造が必要となります。

「失敗」の報告が勲章になる企業
ある企業の社員評価
ある企業においては、社員の「失敗報告」を評価する人事評価制度を持っています。考え方としては、「失敗をしない人間は、チャレンジもしていない」というものが前提となっています。その会社としては、チャレンジしていない社員は評価しない、という軸を持っているわけです。
この失敗報告奨励の意図は、他にもあります。失敗を潜在化させないということにも寄与しており、ミスを隠す体質が起こらない工夫の1つでもあります。そしてまた、このことが社員の心理的安全性にもつながり、組織の風通しを良くしているという風にも考えられます。
結果として、社内は非常に活発になり、失敗を恐れないチャレンジを行うようになったと思います。経営者としては、「何も起きないこと」が心の安定につながりますが、そこと、社員の自主性とは、どうも相性が悪いように思えてしまいます。
失敗奨励が社員の自主性につながる
こういった試みは、社員が引っ込み思案になるのを防ぎます。どんどん前に出てチャレンジする。しかし、チャレンジの結果上手くいかなくても誰にも責められず、みんなでフォローしてくれる。そういった助け合いがチームの結束を強め、社員の自律的な組織運営につながると考えられます。
しかし、大事なことを忘れてはいけません。失敗があったということは、会社の内外に何かしらの問題が発生したという可能性が高くなります。そのことで、顧客を失ったり、場合によっては、損害賠償請求を受けることもあるかもしれません。
そういった場合に備えたリスクマネジメントの部分は、社長が考えなければならない部分でしょう。もちろん、ある程度の組織の自浄効果は発揮されるはずですが、最終責任を社長は逃れることはできません。やることは任せて、責任は負う。これが当面の社長の立場なのかもしれません。

決して楽ではない社長の役目
ここまで見て感じるのは、「組織が自分で動いたとしても、社長が大変なのは変わりがないじゃないか」という感想。はい、まさにそうだと思います。なぜなら、社長は社長です。会社を代表するトップです。実務上の仕事は手放せたとしても、責任まで手放すことはできません。それをするなら、社長を下りるべきなのです。
そういったところから考えていったときに、どんな経営マネジメントスタイルが自分に合っているだろう?これは自分で判断する必要のある話ではないかと思います。