「在宅勤務」をどう考えるか?

働き方改革が叫ばれる中で、多様な働き方を考えていく必要はありそうです。その一つが、在宅勤務、と言えるでしょう。在宅で仕事をすることで、小さなお子さんがいる家庭でも、時間を自由に使って仕事をしたり、介護をしながら仕事をしたり、という可能性が見えてきます。

しかし、企業としてはいくつかのリスクを考えておく必要があるかもしれません。

当社で在宅勤務を検討した過去

やむを得ず在宅勤務を検討

保険代理店を営む当社において、一時、在宅勤務を検討せざるを得なかった事態が発生しました。それは、事務社員の一人が産休した際でした。この時に、彼女は産休・育休後の当社への復帰を希望していたので、その間、彼女の穴を埋める必要がありました。

当社としては、彼女が復帰した際には、臨時の雇用者はやめていただく前提で考えていました。増員するほどの金銭的余裕も、仕事内容でもないからです。そこで、そういった形での有期の雇用あるいはパート・アルバイトとしての募集をかけました。結果は惨憺たるものでした。

そうした時に、日常業務は何とか今いる社員で回すことが可能でしたが、問題はお客様からの電話への対応です。営業は常に外に出ていますし、事務所にかかってくる諸々の電話問い合わせにどう対応するか。普段は大丈夫なのですが、残った事務社員が病気や子供の行事等で会社を休むときに、電話を取るスタッフがいないのです。

システム上なんの問題もなかった

残っている事務社員といろいろ検討を重ねた結果、ほとんどの事務作業は1日や二日遅れてもさほど問題になりません。ですから、その電話対応だけが問題だったのですが、これも携帯電話+転送電話で解決が可能です。また、お客様の契約内容は、タブレット端末やノートパソコンで確認できますので、さほど問題なく在宅勤務が可能なのです。

二の足を踏む理由

そこで問題となるのが、個人情報の漏洩防止です。基本的には神の帳票は持ち込まないとしても、事務所で電話を取るのと、自宅で電話を取るのでは、やはり個人情報漏洩リスクは少し状況が違ってきます。会社としても自宅でのことは管理がしきれません。個人情報を中心に扱う業者にとっては、そういった個人情報漏洩リスクが大きいのではないかと思います。

しかしそれでも、データそのものを持ち帰るのではなく、端末から外部サーバーへアクセスる仕組みは、在宅勤務をより身近なものにしてくれるようになりました。

生産性について考えてみると・・・

一見生産性が高く見えるが・・・

社員が通勤する手間もなく、在宅で仕事が完結するなら生産性向上に寄与しそうなものです。しかし、残念ながら物事はそう単純ではないようです。

トーマス・アレンという教授がこんな研究を行いました。

1970年代、マサチューセッツ工科大学教授、トーマス・アレンは以下のことを検証した。複数の企業が同じ複雑なテーマに取り掛かった場合、より高い成果を上げた企業の共通点を検証した。

結果1
最も優れた結果を出したプロジェクトは、メンバー同士のコミュニケーションの質がとても高い。

結果2
コミュニケーションの頻度と、机の距離の間には密接な関係がある。これをグラフ化したものを「アレン曲線」という。
・物理的距離が8m未満ではコミュニケーション頻度が高く、それを超えると急激に下がる。
・距離を50m話すと、コミュニケーションはほとんど起こらなくなる。

CULTURE CODE最強チームを作る方法』ダニエル・コイル

つまり、距離が遠のくと、生産性は下がる、というのです。

Googleは出社を「推奨」

そんな研究結果もあって、Googleは一時期在宅勤務の方向へシフトしたことがあったようですが、逆に会社への出社を推奨するようになったそうです。
明らかに生産性にちがいがでてきたというのです。

どうやら単純に、「省略すればいい」というものでもないようです。

とすると、チームプレイが必要なこと、改善などが必要なことについては、リアルに顔を突き合わせる環境を持つチームで行う。そして、枝葉の単純作業のようなことは、在宅で行う。あるいは、在宅メンバーを定期的に集め、生身のコミュニケーション機会をそこそこ作る、などと言ったことを検討していく必要がありそうです。

「人や組織をマネジメントする」というのは、どうやら単純買いが最善とは限らないようです。いろいろなチャレンジの中で、試行錯誤が求められることを含み置いたほうがよさそうですね。

 

画像提供元:StartupStockPhotosによるPixabayからの画像

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