企業の経営者であったり、部門の責任者にとっては、ある状況を夢見ている事と思います。それは、いつも社員が生き生きと、目標に向かって全力を尽くしている姿。しかし、現実はどちらかというと覇気を感じられないチームにやきもきとさせられることも多いと思います。
そんな時に、社内のモチベーションを上げるために必要な知識を3つほどピックアップしてみましょう。
目次
人のモチベーションは「自主的に取り掛かること」で上がる
嫌々始めたとしても「自分で決める」ことが重要
一つ目の知識としてお伝えしたいのは、人のモチベーションを上げる方法は非常にシンプルだ、ということです。一言で言えば、「やり始めればモチベーションは上がる」のです。
たとえば、「自分は掃除は好きではない」という人でも、例えば汚くよごれたガスコンロを磨いていると、どんどん夢中になってやりこんでしまうことってないでしょうか?機械的な単純作業が続くこと、色々考えなければならないこと、なかなか取り掛かれない仕事は数あれど、どれも「やり始めさえすれば、それなりに根中出来てしまう」というのが人間です。
つまり、「やり始める」ということをさせればやる気は上がるのです。しかし、残念ながら、やり始めてもいつまでも本気になれない時もあるものです。それは、いつまでたってもその作業そのものに向き合わない時です。「無理やりやらされているとき」にそんな状態になる事が多いのではないでしょうか?
やらされ仕事でもどっぷりはまるとき
そんなやらされ仕事も、いつまでも「やらされ仕事」の場合と、「いつの間にか夢中になった仕事」になる場合に分けられると思います。後者は、自分で「イヤだけど、やるか」とある程度腹を据えたときではないでしょうか?実は、「自分で選ぶ」というのは非常にモチベーションと強い相関関係があると言われています。
槍初めにある程度は強制されたとしても、「まあやらなきゃいけないな」とそれなりに自分でやる、と決める必要があります。そのためにもマネージャーとしては、「選択肢を用意する」という方法が有効かもしれません。二つないしは三つの選択肢を提示し、そのどれかを選択させることで、その課題を自分で選んだ、という思考につながりやすいと言われています。
ここまでのTIPSをまとめると、
①「やり始める」よう仕向ける
②「自分で選択させる」よう仕向ける
という2点になります。
決定に関与させる
自分で決めたことには責任を持つ
そもそも「何をやるか」というところから関与させるというのは、非常に有効だと言われています。たとえば、社内の掃除一つとっても、どの場所をだれがどのようにするのか、というところを含めてその決定に関与させることで、その仕事が自分事になり、モチベーションにつながりやすいと言われています。
また、ゲーム的に競わせるというのも盛り上がり、フロー状態を創り出すコツと言われています。(実利的な競争をやると社内が殺伐とする可能性がありますが・・・)
ということで3つ目のコツは、
③「プロジェクトの決定に関与させる」ということです。
ある企業の工夫
毎週3つの改善提案
さて、ここまでは少しお堅い感じのニュアンスの話でしたが、これをカジュアルに実現するような実践を継続的にされているお話を伺いました。
まず、毎週、社員一人一人が「3つの社内改善提案」を行います。内容は、難しいものである必要はありません。効率化のために電話の置き場を右から、左に置き換えるとか、メモを常にここにおいておくとか、そんなレベルで大丈夫です。(プロジェクトの決定に関与させる)
これをリスト化していくのですが、ここで出した提案は、やってもやらなくてもOK(選択させる)。しかし、やったものについては、リストの中に完了マークをつけます。記憶が定かではないですが、数カ月に一度、その実践の数や内容によってちょっとした表彰をされているようにもおっしゃっていたかもしれません。(やり始めるよう仕向ける)
これで一人3つの改善項目を毎週提示すれば、年間一人当たり156個の改善提案が行われることになります。中身はたいしたものではない場合も多いですが、例えばチームに5人の人がいれば、年間780件もの改善項目のリストアップがあるとすればこれは貴重な財産となりそうですね。「社員からアイデアが出ない」と頭を抱えている経営者からすれば夢のような話かもしれません。
たまに出てくる驚くようなアイデア
こういったことを続けていると、年に何件かは経営者もびっくりするようなヒントになるようなアイデアが出てくることもあるようです。これは別の効果もありまして、社員が間違いを恐れず口に出せるような社風づくりにも役立つようです。つねに発言し、それらが受け入れられる仕組みがとても大事なのだと思います。
社員のやる気を出すためにやってはいけないこと
叱責と褒美
よくあるアメとムチというマネジメントをいまだに信じている人もいるようです。たとえば、褒美を取らせるという方法は、一時的には効果があります。あと一週間であと〇万円売上を上げなくてはならない!というときには、褒美をちらつかせるか、徹底的に厳しい追い込みをするかで成果が上がるかもしれません。
しかし、褒美を受け取った後は、その前の状態よりモチベーションが下がることが心理実験でわかっています。3年や5年で現場から離脱する支社長や支店長がその場限りで成果を上げたいというときによく使われます。ただこれは長期的にみるとだんだんと効果が薄れます。長期的に組織を見るとすれば、あまりありがたくない状態と言えそうです。やってはいけないというのは、こういった短期的効果をねらったマネジメントスタイルと言えるでしょう。
パワハラを生み出したマネジメントスタイル
こういったマネジメントスタイルが、パワハラを生み出したのではないかとさえ私は思っています。また、かつての工業化の中で人の個性を認めるより、同じ動きをさせることが重要だった時代のスタイルともいえそうです。時代の流れの中で、そういったスタイルも変化させていく必要があるのかもしれません。
画像提供元:Gerd AltmannによるPixabayからの画像