「経営者感覚をもて!」というNGワード

経営者の方からは、よく従業員に「経営者感覚をもて!」といっているのを目にします。そして、そのための教育に腐心される方もいらっしゃるようです。
しかし、従業員からすれば、「ならば、経営者としての報酬を」という思いがあるようです。従業員に「経営者感覚をもて!」というのは幻想なのでしょうか?

「経営者感覚」の意味するところ

じつは社長の意図は伝わっていない!?

「経営者感覚」と一言で言っても、経営という範囲はとても広いと思います。戦略策定や、資金繰り、コスト、マネジメント、マーケティング・・・、あげていけばきりがありません。あるいは、会社に起こる事を自分事としてとらえよ、ということかもしれません。いずれにせよ「経営者感覚」という言葉は非常に広い意味を持ちます。

経営者サイドとしては、いろんなことを含めて「経営者感覚」という一言ですべてを悟ってほしいという思いがあるのかもしれません。しかし、残念ながらそう都合のいい話はあまりない、と言えそうです。

どうあるべきか?ではなくどうするべきか?を伝える

本来的には、経営者感覚ということから連想される様々なことに従業員が注意を払ってくれればいうことはありません。しかし残念ながら、従業員には従業員の物の見方がありますし、従業員から見た景色があります。中小企業においては、会社は経営者そのものです。しかし、従業員にとってはそうとは言えません。なぜなら、会社を自由にコントロールすることができないからです。

人は、自分がコントロールできないものに尽くすというのはなかなか難しいものです。逆に、そういった環境でなお経営者感覚を持つ従業員はいずれ独立してしまうかもしれません。

経営者感覚を期待するのが難しいとすれば、やるべきことは「どうすればいいか」を伝えることです。経営者としてはたとえば「コスト意識を持ってほしい」のか、「戦略思考を持ってほしい」のか、それとも自主的な仕事の改善をしてほしいのか、はっきりさせて伝える必要がありそうです。

役職ごとの役割

経営者には経営者の仕事がある

経営者と、新人の事務社員の仕事は言うまでもなく、まったく異質なものです。考えてみれば、経営者は新人事務社員がやっている仕事の全貌を把握していることはまれかもしれません。経営者にできない仕事を、経営者より圧倒的に安い給与で働く新人事務社員がやっている、というのは言葉にするとおかしな構図です。しかし、それが正しいのです。なぜなら、細かな事務の手続きは、経営者の仕事ではないからです。

会社という組織は、それぞれが役割分担をすることで成立するのです。経営者には経営者の仕事が、事務社員には事務社員の仕事が、そして管理職には管理職の仕事があります。

管理職の仕事は意外と明確にされていない

そこで考えてほしいのは、たとえば「課長」の仕事とは何でしょうか?「部長」は?営業部長の仕事が、自分の営業だけをするというわけでもないと思います。部署をまとめ、社員を育てることが一般的な管理職に期待される仕事です。しかし、世の中のほとんどの部長は、その部署の王様である反面、社員を育てるという感覚は意外と少ないような気がします。社員を育てるというより、社員を鞭打って動かすことを仕事と考えている人が多いのではないでしょうか。

ただ、急き立てられて仕事をする部下は、とてもではありませんが「経営者感覚」など持てるはずがありません。あくまで、人に尻を叩かれて働く状況なのですから。

「経営者感覚をもて」と言いたくなったら・・・

それでも自主的に動いてほしい

いつも忙しく、負担の多い中小企業の経営者にとって、やはり社員には自主的に動いてほしいもの。いちいち指示を待つ指示待ち社員ばかりだと、忙しくて仕方がありません。

そんな幻想を現実にしたいとしたら、まずは管理職の人間の仕事の重要なもののひとつに、部下を人として成長させる、というメニューを追加する必要がありそうです。単に自分の駒としてではなく、自立した部下を育てよ、ということだと思います。

さらにいうなら、従業員からは、常に意見を聞き、それを社内に活かしていく習慣が必要となります。自分の意見をないがしろにされてなお、従業員は自主的な提案など行うはずもありません。そしてもう一つ大事なのは、経営者が言う「経営者感覚」とは何なのか、具体的に伝える必要があります。経営者の考える経営者感覚と、従業員が考える経営者感覚はまったく違うものであることが往々にしてあります。

こういったステップは面倒くさく感じられるかもしれませんが、ローマは一日にして成らず、なのでしょう。少なくとも、逆に「経営者感覚をもて」と言い続けて、経営者が満足できる状況になった話は、私はきいたことがありません。

 

 Ольга ФоломееваによるPixabayからの画像

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