製造・小売り・卸売業が直面する「倉庫」「運送」の危険

天災は賠償されない!?

台風の際に運送業者から送られた無情の通知

数年前、関西でも台風が猛威を振るいました。関西国際空港へわたる連絡橋に船が衝突し、行き来を断たれた時の台風、といえば記憶に残っているかもしれません。この際、関西国際空港島における倉庫の多くが、台風によって水濡れ損害を受けました。私どものお客様も一部被害を受けた方がいらっしゃいます。その時に見せていただいた国際運送会社における通知が、とてもあっさりしたものでした。

天災における預かり品の破損には賠償責任はない

つまり、運送業者としては責任を負わないので、自分たちで何とかしてくれ。また、汚損した商品は、自分で引き取ってくれ、という要点が書かれたたった1枚の手紙でした。

荷物を預けたときから、運送業者の責任では!?

お客様もその通知には憤ったと言います。感覚として、一旦荷物を運送業者に預けた以上は、その後の商品到着までは、当然、運送業者が責任を持って管理するものと思っていたからです。

私も気になって調べたところ、実は、運送関連では国土交通省が、『標準運送約款』という運送における契約規定を定めているのです。これはもちろん、強制ではないと思いますが、基本的な運送契約を具体化したものとして知られています。

そこには、免責、つまり責任を負いませんよ、という部分を請う規定しています。

第四十四条 当店は、次の事由による貨物の滅失、損傷、延着その他の損害に
ついては、損害賠償の責任を負いません。
一 当該貨物の欠陥、自然の消耗、虫害又は鼠害
二 当該貨物の性質による発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さびその
他これに類似する事由
三 同盟罷業、同盟怠業、社会的騒擾その他の事変又は強盗
11
四 不可抗力による火災
地震、津波、高潮、大水、暴風雨、地すべり、山崩れ等その他の天災
六 法令又は公権力の発動による運送の差止め、開封、没収、差押え又は第
三者への引渡し

七 荷送人又は荷受人の故意又は過失

標準貨物自動車運送約款(国土交通省)

ここにはめいかくに、天災の責任は負わないとあります。

倉庫の中での水濡れ損害

運送業者の裁量による一時保管中の事故

今回のケースは、運送業者との契約は海外の製造業者から、日本の小売店舗への輸送の依頼でした。海外から日本に入り、関西国際空港で検査を待つ間、一時的に倉庫に保管され、その手続きの完了を待っている状態でした。

お客様はそういったケースにおいても、預けた商品の管理責任は当然運送会社のものであると考えていたので、賠償を受けられると思っていたのですが、契約上それはできないとのことで自分でその補填をする必要に迫られました。

ではこういったケース、保険では対応可能なのでしょうか。

まず、ものに関する保険は一般的に「火災保険」の分野となります。しかし、問題は、火災保険は「保管場所を特定」することが必要になります。となると今回のように、運送会社が任意に契約している保管先を、荷主である小売業者は知ることはできません。したがって、その保管場所に対して火災保険をかけることは不可能でしょう。

ただ近年は、ビジネス総合保険といったたぐいの保険も出てきており、火災保険で運送過程を一貫して補償する保険も出てきました。また。こういった、ものが常に動く前提においては運送保険という選択肢も考えられそうです。

いずれにせよ、一般的な保険屋さんはこういった場合「運送屋さんに預けたら、運送屋さんの責任ですよ」と軽くあしらわれることも多いので、皆様から詳しく問い合わせをする必要がありますので、ご留意いただいたほうがよさそうです。

お気を付けください。

マサコ アーントによるPixabayからの画像

人気記事

レンタルスペース

レンタルスペース

会社案内

会社案内

メルマガ登録

メルマガ・旬の経営情報
ページの先頭へ戻る