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お客様のメリットにならない活動の数々
いつしか社長は考えることをやめてしまったのか?
私どものいる保険代理店の世界では、もう10年以上まえから「合併」が大流行です。しかし、当時も現在も、保険代理店というのは営業社員の能力だけである程度ビジネスが成り立つ業種です。だから、規模が大きくなったからと言ってさほど大きなスケールメリットが働くわけではありません。むしろ、金融機関の末端として手の管理業務の負担がかなり大きくなるため、合併して規模が大きくなることで目に見える効果がある、というわけではないと私は考えています。
それでも10年以上にわたって保険代理店が合併を繰り返すかというと、メーカーである保険会社に認められるためではないか、と私は思っています。保険会社は代理店契約上、保険代理店の殺生与奪権を握っているので、彼らの求めに応じて規模を大きくしなければ、という思いに駆られます。またもう一つのパターンとしては、規模を大きくすることでキャンペーンなどに入賞しやすくなりますから、そういった栄誉を手にする目的で大型化に着手するケースもあるように思います。
ただ、残念ながら彼らのうちのけっこうな割合が、数年後、合併を解消したりします。となるとお客様はたまったものではありません。何年かごとに契約先が変わるのですから、永続性の見込めない合併はお客様から見れば悪、と言えるかもしれません。
解消するつもりで合併するわけではないものの・・・
もちろん会社を合併する際は、それを数年後解消するつもりでやっている人などいないはずです。だけど多くの場合上手くいかないのは、理由があります。それは、自分の利を考えての合併だからです。
ある程度の規模があれば、相応の販売手数料をメーカーとの関係の中でとれるようになるとか、自尊心を高められるとか、ベクトルを自分に向けた理由が強いと思われます。これは厄介なのは本人はそのことにまったく気づいていないので、よくあるのですが、周囲は「あそこは絶対うまくいかない」という合併を、本人たちは「自分達だけはうまくいく」と思っていることが多いように思います。
合併とか、合併解消とか、そう言ったことには多大なエネルギーが必要になります。しかし、そのエネルギーがお客様ではなく、内向きのものである場合、それがいい形で実を結ぶことは難しいのではないでしょうか。
何かを始めるときに問いたい事
それはだれのためなのか?
合併に限った話ではありませんが、大事なことは「その行動は誰のためにするのか?」ということをしっかりと把握しておくことは大事だと思います。もちろん、自分のためにやる活動もとても大事です。だからそれをなくせというつもりはありません。問題なのは、自分のための活動を、あたかもお客様のためなどという表面的な上塗りをしないほうがものごと、うまくいきやすいと思うのです。
自分ためのことは、自分のためにやりたいと認識してやればいいし、お客様のための行動は、お客様のためという風にしっかりと軸を定めるべきだと思います。それをごちゃまぜにすると、何をやっているのかがよくわからなくなってきます。
そして「それはだれのためのなのか?」という問いは、なんとなく世間でやっていることを自分も真似しよう・・・的な根拠のない行動をあぶりだします。経営者としての大事な仕事の一つは「決める事」であると言われます。決めるためには、「決めるべき事」が目の前にあることを認識できなければなりません。それを浮き出させるのが、この問いなのではないかと思うのですが、如何でしょうか。
