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トップマネジメントの責任
われわれの事業は何かを問う
ドラッカーは、著書『マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則』の問いを発することがトップマネジメントの責任と言います。我々の事業は何か、と問われれば多くの方は例えば、「飲食店です」とか「保険屋です」とか「〇〇製造業です」とかいう風に簡単に答えるかもしれません。
しかし、ドラッカーは「わかり切った答えが正しいことはほとんどない」と言い切ります。
また、
企業の目的としての事業が十分に検討されていないことが、企業の挫折や失敗の最大の原因である。逆に、成功を収めている企業の成功は、「われわれの事業は何か」を問い、その問いに対する答えを考え、明確にすることによってもたらされている。
【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則 (P.F.ドラッカー)p23
といいます。
捨て置けない話ですね。
顧客から見た自分達
さらにドラッカーはいいます。
顧客にとっての関心は、彼らにとっての価値、欲求、現実である。この事実からしても、「われわれの事業は何か」との問いに答えるには、顧客からスタートしなければならない。すなわち顧客の価値、欲求、期待、現実、状況、行動からスタートしなければならない。
【エッセンシャル版】マネジメント 基本と原則 (P.F.ドラッカー)p23
この文章を見てハッとするのは「〇〇屋さん」というのはあくまで私たちが扱っている商品であって、大事なのは顧客から見てそこにどんな価値があるか?ということなのではないでしょうか。
お客様はどんな価値を感じているか?
私たちが提供しているつもりのものと顧客の望みは違うかもしれない
たとえば喫茶店(今では死語かもしれませんが…)という場所は、美味しいコーヒーを提供する場、というのがその店長の考えかもしれません。確かにそれも顧客の期待値の一つと思いますが、実際のところはそれは応接室としての機能を求められていたり、ミーティングルームとしての機能を求められていたり、テレワークの場や休憩の場所としての機能を求められているかもしれません。
この場合、一生懸命コーヒーの味にこだわっても顧客の望みは満たされません。それよりも、仕切りがあるとか、WiFiがあるとか、電源コンセントがあるということが大事なのだと思います。
しかし、喫茶店の店長が「自分はコーヒー屋」と考えている以上、ズレた努力をしがちになってしまいます。
ドラッカーが言いたいことがこういうことかどうかはわかりませんが、私はそんな風にとらえました。
私たちの商品は「手段」であるという前提に立った時に見える物
考えられることは、私たちの商品はお客様にとってはあくまで手段であり、目的ではない可能性が高いということです。よく、セールスの教科書に出てくる事例があります。お客様は「ドリル」を買いにホームセンターにやってきたけど、本当に必要なのはドリルではなく、家具に穴をあける事であったという話です。この場合、穴をあけるサービスがあればお客様は大喜びなのですが、「どんなドリルがいいか?」をコンサルしているうちはお客様の本質には触れることができません。
ドリルという商品は手段である、という考えに立ってはじめて見えてくる世界です。
私たちは自分たちの商品やサービスに思い入れが強いため、商品ありきで考えがちです。商品を単なる手段であると考えたときにはじめて顧客の思いが見え、その思いを達成するためのサービスなり商品を取りそろえることは、一つのイノベーションとも言えそうです。
「モノ」を売るのが難しくなってきた時代だからこそ、あらためて、私たちの事業がどんな価値を顧客に提供しているかを考える機会を持ちたいところです。
