目次
今のビジネスを基準にするか違う価値観をもとにするか
需要と供給のバランス
学生時代多くの人が、こんなことを習ったと思います。商売においては需要と供給のバランスが重要で、需要に対して供給が間に合わないと、その商品は高価になる。逆なら安価になる。こういった価格はあるていど需要と供給のバランスに支配される、という話を。
このところのガソリン価格が顕著で、コロナウィルスの影響で自粛期間にはガソリンは一気に値下げしました。需要が減って、供給がだぶついたからです。逆に、自粛期間をあけるとガソリン価格は上昇を始めています。人が動くと、原油価格も上がるということなのでしょう。
近年、デフレ傾向が強い印象がありますが、これも国の経済政策などの影響もあるかもしれませんが、そもそもが需要が供給程に強くないのではないかと思います。
高齢化社会で崩れる需給バランス
さらに言うなら、高齢化社会がますます進み、人の活動が減ってくると、単純に考えて、さらに需要は下がりそうです。一方、事業者は供給量を保とうと躍起になるでしょう。現在、若い人材がおらずどの会社も採用に苦慮しています。少ない若者を取り合っている状態なのですが、ここで微妙な話が出てきます。
日本社会における需要が下がることはかなり確実に見えているのに、企業側は供給を減らそうとしないのはある意味不思議なことと言えるかもしれません。私は経済の専門家でも何でもありませんので、あまりに素人クサい分析なのかもしれませんが、シンプルに考えればこんなことが言えるのではないでしょうか。
どうせ市場が小さくなるなら、小さくなった市場に最適化した企業になればいい、と思うのですがいかがでしょうか。なんだかよくわかりませんが、人類がこの世に誕生して以来常に拡大してきた活動領域。それをこれからも広げなければならないという呪縛に縛られているような気がしてなりません。
たくさん売るビジネスモデルからの脱却
水道哲学は完了した!?
もともと日本は、戦後、貧しい状態からの復興を果たしました。有名な、松下幸之助氏の「水道哲学」は素晴らしいものだと思います。当時、たまたま通りがかった公園で、今でいうホームレスが水道をひねって水を飲んでいる風景を見ていたと言います。ホームレスの水ではないのに、彼が水を飲んでも誰一人彼をとがめる人がいない。水は大事なものであるにもかかわらず、それを取られても誰も起こらないのは、それが潤沢にあり、安価だからと考えたと言います。だからこの世の中に水道のようにモノをいきわたらせることで、すべての国民が豊かになる。そんな思いを掲げたのが水道哲学だと聞き及んでいます。
それは今や果たされていると私は思うのですが、次のフェーズとしては人は「時間」を取り戻すべきではないか?と私は考えています。
「時間」を取り戻すのは自由時間を増やすことではない
この「時間を取り戻す」という観点で言えば、たとえばワンクリックで物が変えるというAmazonのような便利さをイメージされるかもしれません。もちろんそれも時間を取り戻すことの一つだと思います。無駄な時間を削減するという考え方ですね。一方で、何かを楽しむ時間というものも大事だと思っています。
たとえば、洋服が欲しいと思ったとき、青がいいか?白がいいか?
ポロシャツがいいか、ワイシャツがいいか、
まあいろいろあると思いますが、豊かな気持ちで商品を手にしたときの未来に思いをはせるという時間も結構大事な時間じゃないかと思います。
私などは同世代の男子と同じ程度には車好きですが、車を買い替える際にいろんなディーラーに足を運び、話を聴き、乗り比べをすると言った過程は結構好きです。めんどうだな、と思う反面こういう時でなければ車のことを真剣に考えることなどありませんから。
私にとってはこのような時間は、とても大事だと考えているのですが、リアルなお店がなくなるとそんな幸せの時間を失うことになってしまいます。
ゆったりと楽しみながら悩む時間
小売業に関して言えば、たしかに消費財として手間をかけずに買いたい商品も様々ありますが、それとて小さなこだわり一つが人の目を引くこともあります。たとえば、今まで「やすいのでいいや」とおもっていた塩や砂糖を、少し高いものを手にするだけでこれだけ料理は変わるんですよ、なんていうことを知らされればきっと高いものが欲しくなります。200円の塩を買っていたのが、400円になったところで2倍ではありますが、たぶん払う人は払うでしょう。
私は実は、社会全体は人口問題のみならず、資源や環境問題などの観点から、シンプルな方向に行く可能性はけっこうあるような気がしています。確かに日本でも移民を受け入れれば見かけの国内経済は回っているように見えるかもしれませんが、資源の問題や国土の狭さを考えると、そこまでぎちぎちに効率化することの良し悪しを考えるフェーズは出てくるのではないかと思います。
大企業は、他にすることが亡くなった時、効率化に対して神経質になる傾向があるように思いますが、社会も今のように効率化を求められる時代こそ、経済の広がりの限界に近いところに来ているのかもしれません。
じゃあ、どうすればいいのか、というところですが具体的な施策はともかくとして、お客様の豊かな時間を創造する、という軸で考えた何か取り組みができないでしょうか。そんな方向感で考えて行くと、小売業の未来が見えてくるかもしれないと私は考えています。
