小売はなくなるのか?

人は買い物をしなくなる!?

受動的買い物と主体的買い物

最近、書店では小売りの時代は終わった、的なタイトルの本をよく見かけます。私が読んだものでは例えば、『2025年、人は「買い物」をしなくなる 』(望月智之)といったものです。中身を読んでみると、なるほど、と納得する内容で、今まではメーカーはリアルなお店の棚の場所の奪い合いだったところから、今やスマホ画面の中に商品棚があるかのような時代になりつつあると言います。

そこからはもはや各種センサーによる自動発注のようなシステムで、私達は買い物をしている感覚もないまま、必要なものが必要なタイミングで届くようになる、と言います。なるほど、便利な世の中です。

ただ、買い物は恐らく常に一つの種類ではないと私は考えています。「仕方がないから買う」「必要だから買う」というどちらかと言えば消極的な理由で買う買い物と、「欲しいから買う」「選ぶことにワクワクする買い物」というモチベーションをもって行う買い物を区別すべきだと考えています。前者を便宜的に「受動的買い物」と後者を「主体的買い物」と分けて考えてみましょう。

消えていくのは受動的買い物

世の中がだんだんと便利になると、買い物というのはけっこうな負担感を感じるものです。特に、消耗品のようなもの、コモデティ商品に関して言えば、スマホでボタン一発で買えてもなお、忘れていたりすると「面倒くさいな」ということになるわけです。するとそういった発注作業を不要にしたいと思う。それは当然の想いですし、そういった発注が自動化されるとブランドスイッチは起こりにくくなるかもしれません。買い手としては、どうでもいいものを選択したりして脳のリソースを浪費することなく、気が付けば必要なものが必要なタイミングで届く。これはなかなかに便利です。そういったことから、「買い物という概念がなくなるのでは?」という議論が小売界隈では多くかわされます。確かに、受動的買い物はその存在感をますます薄めていくと思いますが、主体的買い物まで消えるとは到底重せません。

人は合理性ではなく感情で動く

BMWの価値は「うらやましい」と思う人がから成立する

買い物の本質とはどこにあるのでしょうか。それは、自分を癒し、慰め、価値を確認する行為ではないかと思うのです。かつて、アメリカの自動車メーカーのCEOがこんなことを行ったそうです。自分たちの商品は車ではなく、ステイタスだ、と。そして、BMWのマーケティング上、彼らの広告はBMWを変えない層にも表示されるように設計されているそうです。それはなぜかというと、BMWにあこがれているけど変えない人がいる、ということがブランディング上重要なのだ、というのです。ステイタスというのは相対的なものであり、そのステイタスは誰もが手に入れられるものでは成り立たないというわけです。

そして、そういったステイタスを手にし、ひけらかすのはけっこうワクワクするものです。そんな楽しみをAIで自動化したいと思う人はあまりいないのではないでしょうか。自分独自のコーディネートだとか、自分の趣味の良さを誇示する音楽の好みなど。物欲はたいてい、何か自分を表現するアイテムとして感情と紐づいているものです。そういったものを選ぶのは、たぶん、人はAIには任せません

人生を豊かにする主体的買い物

恐らく、消極的な買い物は、多くの書籍が表す通りこれからますますなくなってくるかもしれません。そこで、中小企業や個人でやっているような商店が、「ああ、だから俺たちのビジネスは終わった」と考えるのは少し早計かもしれません。楽しくない消極的買い物は、どんどん自動化がなされていき、効率と低価格が進んでいくんじゃないかと思います。一方で、主体的な買い物は、そもそも効率化ができないのです。むしろ、人の手が入るほうが価値が高まるお琴も多いと思います。実は、中小の小売業はそういった市場に活路を見出していく必要があるのではないでしょうか。

そうはいっても・・・と思う人もいるかもしれません。たとえば、自分のお店は何の変哲もない大量消費商品ばかりを扱う店だ、と。そういったビジネスはだんだんとやりづらくなるという側面はありますが、その品ぞろえに店主のこだわりを加味すれば、それだけで少し違った商品になるんじゃないでしょうか。たとえば、インドでカレーを食べつくした店主が認めた者だけを置く香辛料のお店とか、すべて店主の眼で見た畑だけで作られた野菜のお店とか、OLの通勤着回しを提案できる衣服店とか。

こういったところは、それぞれの得意分野を活かせばいいと思いますが、あなた唯一という売りを持つ商店は、ちがった独自のスタンスをまだまだ取れる余地はあるんじゃないかと思います。横並びをやめれば、そんな活路が見えてくるのではないでしょうか。

SatyaPremによるPixabayからの画像

人気記事

レンタルスペース

レンタルスペース

会社案内

会社案内

メルマガ登録

メルマガ・旬の経営情報
ページの先頭へ戻る