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戦後のレジャー施設としての百貨店
個人商店の商店街は安土桃山時代にはすでにあった
ある業種・業態の未来を考えるにおいて、その歴史を調べてみると時に参考となる情報が得られたりすることは良くある話です。たとえば、カフェという形態はいかにも新しい印象がありますが、明治時代にもカフェ(喫茶店ではない)のブームがあったことはご存知でしょうか?資料を見てみると、当時すでに今でいうマンガ喫茶的なところもあったようです。歴史は繰り返されると言いますが、個人経営の喫茶店の時代は終わったと思いきや、明治時代のカフェが再来したのですから面白いものです。
小売店に関して言えば、その歴史は非常に古く、たとえば信長の時代には楽市楽座という商店街のようなものが作られたりしています。それが20世紀初頭に百貨店が出現し始めます。当時は珍しかった「エスカレーター」を配したビルに、様々な商品を取りそろえ、食堂や屋上遊園地まであるいわばファミリー全員が楽しめるテーマパークと言ってもいいような形態だったと言えそうです。
スーパーマーケットの台頭
その後、1960年代から1970年代にかけてスーパーマーケットの体操が始まります。すべての買い物を一か所で、安く、手軽に済ませるというのは非常に魅力的です。百貨店と一般の個人商店は、少し非日常的な商品ラインナップの百貨店と、日用品をより安くというスーパーマーケットである程度の住みわけはある程度で来ていたかもしれません。しかし、レジャーの多様化も進み、百貨店は屋上遊園地を占めるなど明らかに客の求めるものが変わってきたように思えます。
かつて、百貨店が「テーマパーク」然とした位置づけであった時は日用品を買う個人商店ということで住みわけができていたものが、スーパーと個人商店はガッツリと客層がかぶってしまいました。その後スーパーはより規模を大きくし、自動車の普及とともにショッピングモールとなっていきました。今や、個人商店は青色吐息と言えそうです。
もし自分が他の業態をやっていたなら?
客層と強みを再チェック
今やショッピングモールに押されて勢いのない百貨店ですが、一つには品ぞろえはすでにショッピングモールも十分であるわけです。そしてショッピングモールには手軽な駐車場があるものの、百貨店は駅近なぶん駐車場が少ないか、とにかく料金が高い。すると、徐々に人は敬遠し始めます。世の中のデフレ傾向も相まって、百貨店は体力を削っていく方向となってしまいました。
じゃあ、自分が百貨店経営者だったらどうするでしょう。私はそんなに詳しくはありませんが、百貨店は実はけっこう店売りより外商の持つ売上げが大きいとも聞きます。そちらに特化するのもあるかもしれませんし、あるいは会員制であるとか、入場資格を設けるとかして、徹底的な高級化を目指したほうがいいかもしれません。かつては、ファミリー層を狙いましたが、一定以上の富裕層を相手にし、ハイブランド以外は扱わないという割り切りがあってもいいのかもしれません。
ショッピングモールの限界
実はアメリカでは、一時期一世を風靡したショッピングモールが徐々にすたれてきているそうです。廃墟と化したショッピングモールも数知れず、そうでないところもかなり苦境に立たされていると言います。その原因の一つが、通販の台頭と言えるかもしれません。買い物その物に楽しみを感じることが少ない日用品の買い物は、おそらくかなりの部分通販にシフトしていくでしょう。
実は、ショッピングモールもまた、かつての日本の百貨店のように「ファミリーのレジャー」という側面を持っていたように思います。これが徐々に変化していき、特に日本の高齢化の傾向からすると、広いモールを歩くが苦痛だとショッピングモールを敬遠する層も出てくるかもしれません。ショッピングモールというビジネスモデルも、かの国ではすでに衰退を始めているようです。
スーパーにはない個人商店の良さ
大きなスーパーに行くと、今では「手巻き寿司用」のお魚のパックが用意されています。家ではよく手巻きずしをしますが、以前はスーパーで買っていました。しかし、あるとき友人から聞いた個人商店でお魚を頼んでみました。すると、値段はさほど変わらないのに、美味しいんです。それもそのはずで、スーパーの魚は店頭に並ぶまでに色んな部門を通ってきますが、個人の魚屋さんは基本、市場から直接仕入れるのでしょう。やはり鮮度管理が行いやすいんだと思います。
「こんな値段で、こんなにおいしいものを食べられるなんて、なぜ今まで教えてくれなかったのか」と思ったくらいです。専門店はやっぱり、いいんですね。だからそんなにいい個人商店が集まってくれたらいいのにね、ということを考えて行くと、「商店街」にかえってくるわけです。
となると、課題は「個人商店では夕食のすべての材料がそろわない」という面倒と、「店員さんとコミュニケーションをとるのがいや」といったところかもしれません。問題が明確になれば、対処だってできるかもしれません。
どうせ車で買いものにでるなら・・・
たとえば件の魚屋さんは、電話で予算と人数、ある程度の好み、取りに行く時間を伝えると先方のお任せで手巻きずし用のセットを作ってくれます。電話するのが面倒なのですが、例えばこれがシステム化されてスマホでできればどうでしょう?だいぶん楽になりそうです。さらにそこでクレジット決済を済ませればOKだといいですね。
さらに言うと、お店に足を運ばなくても配達してくれるとか、配達でなければドライブスルーのような場所で受け取ることができればかなりありがたいと思います。つまり、今まではお店に集客するイメージでしたが、受け渡し場所をどこかに設定すればいい。
で、このシステム、一つの魚屋さんでやり切るのは大変です。じゃあ、それを商店街でやってみてはいかがでしょうか。一つの商店街で、商品注文システムを作り、そのオーダーに応じたパッケージを作って用意しておく。お客様は、商店街共有のドライブスルーで荷物の受け渡しだけを行う。なんだか個人商店のネガをだいぶん解消できそうな気配はないでしょうか。
