小売店の未来像

どこでも買える本、ここしか得られない体験

商品で差別化ができない業種

少し思い出してみてください。最近、本を買いましたか?また、それはどこで買ったでしょうか?最近は雑誌ぐらいしか買ってない方は、買った場所はきっとコンビニあたりが有力候補ではないでしょうか。それ以外で小説やビジネス書を買ったとしたら、きっとそれはターミナル駅にあるような書店か、ショッピングモールにあるようなそこそこ大きな書店ではないでしょうか。おそらく、街の片隅にある、個人経営の書店という方は、非常に少数派ではないかと思います。

かつては、どんな小さな駅でも駅前にはそんな小さな書店があって、私などは学生時代著とエッチな本をそんな書店で買った記憶があります(恥)。まあ、そんなノスタルジーはともかくとして、私のケースでいうと年間100冊以上は間違いなく本を買いますが、その半分はAmazonで、残りの半分はショッピングモールの大型書店です。

その選択基準は、まずは手軽さ。そして、選択肢の多さ。あとは行動範囲の中にある場所で、ということになります。私の場合、リアルな書店がなくなると困るので、できるだけリアル店舗で買うように心がけていますが、それ以外はどこの書店という決めは自分にはありません。どうせどこで買っても同じ値段だからです。

本のようにどこで買っても同じ商品で、同じ値段であれば、商品での差別化は難しくなります。すると、どうしても集客力のある施設に吸い寄せられ、そこで買う、というパターンが一般的になるのではないでしょうか。

Karolina GrabowskaによるPixabayからの画像

利便性で勝てないなら・・・

そういった大手資本のライバルと利便性で争うのは、個人店にしてみればかなり無理があります。しかし、現代でも元気な個人店舗はあります。たとえば、一時期話題になった、1万円選書の「有限会社いわた書店」さん。何をやっているかを、WEBサイトから引用します。

一万円選書について
忙しくって本屋にいけない、最近同じような本ばかりで出会いが・・・、などなど読書難民のあなたの為に社長の岩田がお薦めの本を(だいたい)一万円分選んでお届けするというサービスです。
おかげさまで好評です!
2018年4月23日のプロフェッショナル仕事の流儀にとりあげていただきました。

有限会社いわた書店

簡単に言うと、所定のカルテに自分のことや好みを書いて、1万円を送金すれば1万円相当の「岩田さん」が選んだ、自分にぴったりの本を送ってくれるというものです。あったこともない「岩田さん」の選書なんて誰が買うのか、と思う人もいるかもしれませんが、この申込は現在抽選待ちです。年に一回の抽選ということです。

たぶん、本をたくさん読む人は、ある程度自分の好みの範囲では読み切っちゃって、新しい出会いを求めているんですね。それは例えばリアル書店をウロウロすることでの出会いもあるかもしれませんが、大抵売れている本としか出合いません。もっと突発的な出会いはないかと、探し求めているんだと思います。そういったひとにとって、この選書はたまらない魅力と好奇心を感じるのでしょう。わたしも正直、気になります。

触れあいの場

一方でこんな書店もあります。著者との関係を作り、著者と顧客を交えた様々なリアルイベントを企画する本屋さんです。ここでも、自分たちがおすすめしたい本を売りたい、という強い思いがベースにあるようです。

その様子がこの記事からよくわかります。

なぜ書店にヘイト本があふれるのか。理不尽な仕組みに声をあげた1人の書店主(BUSINESS INSIDER)

商品に命を吹き込む

この二つの小売店に共通すること

ここに挙げた二つの小売店の共通点を挙げるとすれば、どんな共通点が挙げられるでしょうか?いろんな切り口はあるのですが、私は「本好きな人のために」という思いが強く伝わってくるような気がします。たぶん、本に対して強いこだわりのない人は、今売れてる本は?というのがとても重要なのだと思います。しかし、「今売れてる本を買える場所」はどこにでもあるわけです。それは大きなお店やAmazonのようなECサイトで買ってくださいね、という割り切りだと思います。

これらのお店は、本が好きで、けっこう自分なりには極めたから、誰かと語り合いたいとか、その価値観を共有したいとか、自分の感性がわかる人のおススメを見てみたいとか、そういうものではないかと思うのです。お客様の想定を一定程度の本好きな人に絞り込んでいるんだと思います。誰でもに来てほしいのではなく、好きなヒトだけ来てください、という感じ。どこにでもある売れセン本はあまり並べてないかもしれないけど、マニアックに「いい本だなぁ」と自分たちが思う本は一生懸命売りますよ、と。

このこだわりがあるお店では、お客さんは言ってみれば生徒のようなものではないでしょうか。マイスターから学びたい。そんな思いで、書店との絆を作っていくのではないかと思います。

無機質に商品を並べた小売店は、大手で十分。個人店舗はどんどん個性化を進めていくのがいいのではないでしょうか?

Dimitris VetsikasによるPixabayからの画像

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