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値付けのむずかしさ
売れないときに初めにすること
恐らく多くの商売人が、「思うように売れない」という事になった時に頭に浮かべるのが「値段を下げる」という事ではないでしょうか。これほどまでに売上が上がらないのは、値段が高いからかもしれない。そんな風に感じて、値下げしたり値引きに応じたりしがちです。
しかしこれにも限度があります。たとえば、Amazonなどでは外国業者がけっこういまして、これが悪質な商品を販売していることもあるようです。実際に私も、「相場の半分以下の値段」のスマートウォッチを購入したところ、1週間と持たずに壊れてしまいました。
私どもが経験したある事例では、他社で契約されていた保険が年間20万円の保険料でした。しかし、当社でお見積もりを出すと3万円程度。お客様は喜んで契約されるかと思いきや、「こんな金額で本当に大丈夫?」と不安そうな表情です。
本当に安さを求めているのか?
私は時々有料セミナーをやります。この集客がまた難しいのですが、金額を下げると何が起こるかというと、来られる参加者の質が変わります。ストレートに言うと、安い額で参加されるお客さんは、依存心が高めの傾向が強いのです。そして総数はというと、あまり変わりませんでした。
3万円のセミナーでも、5000円のセミナーでも集客人数は変わらず、高いほうが筋のいい顧客だったわけです。つまり、かりに10名の集客だったとすると、30万円の売上でいい顧客とつながるか、5万円の売上でちょっと手のかかる顧客とつながるか、という印象でした。
何が言いたいかというと、どういうお客様とつながり、どういうビジネスをやっていくのか?という事をしっかりと決めておかなければいけない、という結論になりそうです。

値段そのものが価値となることも・・・
ある心理実験が証明した「価格」の価値
今やテレビ番組でも似たような企画があるようですが、目隠しをしてワインを飲んだとしましょう。高いワインと、そうでないワイン、いったいどの程度の人が区別できるでしょうか。実際にそんな実験をしてみると、目隠しをしてもほとんどの人が正解できなかったわけです。逆に、値段を伝えたうえで飲んでもらうと、値段が高いものは美味しいと感じる(たとえ試飲したワインの本当の値段が伝えた値段とは全く違って安ものだったとしても)ものです。
とくに、想像を超える値段がついたものを見ると、そこには何か価格相応のものがあるんじゃないかと勝手に想像するもののようです。値段よりむしろ、自分の感覚を疑ってしまうのです。
正しい価値は誰も知らない
モノの値段というのは、その人にとっての価値の高さと比例すると思います。たとえば、どうしても痩せたい人にとって、100%やせることができる薬があれば、50万円でも安いと感じるかもしれません。砂漠で脱水症状の出てる人にとっては、1本100円のミネラルウォーターも、プライスレスな価値があるでしょう。
本来、モノの値段というのはそういった、ニーズの強さとのバランスで決まるものですが、一旦市場が出来上がってしまうと、そこに相場ができてしまいます。自働車であれば、相場として100万円~400万円くらいが一般的でしょう。そしてそこを超えるにはそれなりの理由が必要です。しかし、一方で400万円の車と800万円の車の価値は、倍になるかというとそういうわけでもないと思います。しかし、うまくしたもので、たとえば超高級車であるロールス・ロイスの広告が先日Instagramに掲載されていました。たぶん、そんな車を乗る層はInstagramを使っている人たちではないと思うのですが、こういう高級車はその車に乗る人への羨望も集めなくてはいけないのでしょう。桁違いの値段は、原価の違いというより、「他人との差別化」という優越感によってもたらされるのかもしれません。だとすれば、高ければ高いほど良い、という一面もあるのでしょう。
さて、これまでのビジネスはどちらかというと「老若男女だれいでも」受け入れられることをイメージしてきたケースが多いのではないでしょうか。しかし、それもそろそろ限界にきているようです。ガラケーしか使えない年配者もいれば、生まれた時からスマホが身近にある子どもたちもいます。そういった人たちが、同じ場所で、同じものを、同じ値段で買うはずがありません。
私達は、どんな顧客とつながるかをまず明確にし、その顧客が何を求めているかを知らなければならないのかもしれません。価格は、その顧客が感じる価値。原価から積算するのでも、ライバルを見ながらつけるのでもないものなのではないと言えるかもしれません。
