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9万7000人余りのアンケートから浮き彫りになったこと
感動サービスは割に合わない
『おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係』(マシュー・ディクソン、ニック・トーマン、リック・デリシ)によると、9万7000人余りの顧客アンケートを分析した結果、こんなことが明らかになったと言います。
期待以上のサービスを受けた顧客と、期待が満たされただけの顧客のロイヤルティには、事実上差がまったくなかった。
サービスには満足したが、その企業との取引をやめて他から購入しようと思っていると答えた顧客 20%
おもてなし幻想
満足していない顧客のうち、今後同じ企業から購入する気が十分あると答えた客 28%
私達は、感動こそが顧客をつなぎとめる。あるいは、顧客満足こそが顧客をつなぎとめる。そんな風に考え、顧客満足度を上げるための努力を一生懸命してきたのではないでしょうか。
もちろん、それが間違いとは言いません。しかし、どこかに「ズレ」がある事は否めないのではないでしょうか。
顧客が本当に求めていることは?
ここで、私たちが何かのサービスを利用する際に、何を基準に選んでいるかを考えてみましょう。たとえば、ちょっとした飲み物を買いたいとき、どこへ行くでしょうか?たぶん、こんな感じでイメージするのではないでしょうか。
・近所に、自動販売機はあったっけ?
・もう少し品物のバリエーションのあるコンビニはあったっけ?
・いろいろ選びたいから、車で出かけてでも大きめのコンビニがいいかな
その時によって、基準は様々だと思います。
たんに、ミネラルウォーターが欲しいだけなら自動販売機で十分です。
いろんなものから探したければコンビニに行くし、できれば駐車場があるとありがたい。
よくよく考えてみると、必要なのは「いかに面倒なく、目的を達することができるか?」ということが大事なポイントのようにも見えます。

チラシの問い合わせ窓口の工夫
サービス案内チラシを作る際に最も大事なもの
チラシやWEBなどにおけるマーケティングを行う際、何が大事かというと問い合わせ手段のバリエーションだと言われます。たとえば、問い合わせが電話だけだった場合、人は、こちらの営業時間に合わせて電話をしなければなりません。また、人によっては電話で話すこと、そもそも人と話すことにストレスを感じる人も少なからずいます。
そういった人のために、例えばメールやFAX,郵便や、最近ではチャットボットなどで気軽に、様々な手段での問い合わせができるようにしておくのが肝要だと言います。最近はどうかわかりませんが、かつては「FAX 24時間受付中」とあるだけで、夜間にチラシを見た人がFAXで申し込んでみよう、という発想を頭に浮かべやすくなるようです。
問い合わせ窓口の工夫が示すもの
こういった問い合わせ窓口を複数用意するというのは、何を意味するのでしょうか。これはまさに、「顧客ができるだけ負担の少ない方法」を選ぶための選択肢の提示です。じつは、顧客は、サービスの満足度以上に「どれだけ(心理的・物理的)負担を少なくサービスの購入ができるか」という事を重視しているようにも思えます。
だから例えば、申込書類はできるだけ記載するスペースが少ないほうがいい。
手続きの手順は少ないほうがいい。
説明なんかは手短なほうがいい(けど、求めれば詳細に聞くこともできるほうがいい)
そんな風に、いわば購入手続きの流暢性がとても大事だと考えられます。
顧客としては、企業の都合、つまり、営業時間内に限定したり繁忙時間をさけて電話をするといった問い合わせはできれば避けたいのです。
つまり、リピート客をすぐに増やしたいなら、こういった「顧客の面倒」を徹底的に排除するという事が重要ではないでしょうか。たとえば、理容店のQBハウスなどは、時間単位の料金が注目されましたが、実は「散髪にあまり時間をかけたくない」というサービス利用の面倒くささをカットしたところが評価されていたのかもしれません。
どうすれば顧客の負荷を下げられるか。それを徹底すれば効果が挙げやすいのではないでしょうか。
