「役に立つ」か「意味がある」か

交通手段のフェリーと船旅

私のフェリー体験

大阪在住の私ですが、父の田舎は徳島です。私が子どものころは夏に正月にと、徳島へ連れていかれたことをよく覚えています。その際にはまだ、瀬戸大橋などはなかったので、大阪から徳島へはフェリーで行っていました。

大阪の自宅を出発し神戸に行きます。そこから2時間半ほどでしたかフェリーに揺られて、徳島港へ。そこからさらに一時間ほど車を走らせて、田舎に到着です。ほぼ一日かけての移動ですから、とうてい日帰りなどはできませんでした。

それが今や、瀬戸大橋、鳴門大橋、明石大橋などの橋ができ、車を走らせれば2時間ちょっとで徳島の田舎に行くことができるようになりました。つねにお盆には満員だったフェリーは今や廃れて営業を終えたと聞いています。

便利さでは勝てなかったフェリー

車で、高速道路を走れば日帰りも可。こういった便利さを人は体験すると、フェリーでの退屈な長旅は、勘弁いただきたいものです。実際のところ、私の子供のころの記憶を紐解くと、退屈な船内での時間が非常に苦痛だったことだけが強く記憶に残っています。

便利さに関して言えば、フェリーは車には勝てなかったのです。

Mario OhibskyによるPixabayからの画像

「役に立つか」「意味があるか」

このコンセプトに当てはめてみると・・・

山口周著『ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式』では、ビジネスにおいての価値について「役に立つ」と「意味がある」にわけて考えることを提案しています。

例えば、かつては本州から四国に渡るにはなかなか方法がなかった中で、船という方法が出てきました。これはまさに「役に立つ」サービスです。そしてこの役に立つサービスは、例えばスピードアップを図るとか、瓶巣を増やすとか、「役に立つ」という考え方のもとその内容を磨いてきました。

しかし、「役に立つ」には限界があります。フェリーではその機能に限界があるように、橋ができてしまうと、そこに完全に顧客を奪われてしまいました。結局、フェリーという移動手段は、今はなかなか選択されにくくなりましたが、これをたとえば「意味のあるもの」として見るとどうなるでしょう?

「意味がある」という事の意味

「意味がある」というのは、たとえば、単なる移動手段としての自働車であれば、カローラで十分なわけです。しかし、人は例えば、BMWやベンツ、フェラーリが欲しいと言います。これは、「役に立つ」という意味では、カローラと大差がないかむしろフェラーリなど役に立たない部類に入るでしょう。なにしろ、2人しか乗れないとか、荷物が詰めないとか、燃費が良くないとか・・・。しかし、フェラーリにはそれを選ぶ「意味」があります。それはデザインかもしれないし、ブランドの歴史かもしれないし、製品のバックグラウンドに流れるストーリーかもしれません。BMWやベンツも同様で、そこそこ実用性は持っている、つまり「役に立つ」という機能をほどほどに持っていますが、カローラの数倍の値段の価値を作り上げているのは、その製品の「意味」でしょう。

そう考えると、フェリーに意味付けができると、あるいは今も存続の可能性はあったのかもしれません。地上の生活と離れた別次元の場所での一時の憩いとなるかもしれませんし、なかなか都会では見ることができない満天の星空を見ることができるかもしれません。「役に立つ」ことを考えると、移動手段としては「速く」か「安く」に偏りがちですが、「意味がある」というスタンスから考えると、むしろ「遅い」ことが価値となることもあるのではないでしょうか。

これからは「意味」を見出す時代

さて、ビジネスにおいて、今やモノ余りと言われます。たとえば私どもの保険業界では、保険販売をする業者は20万店あり、保険販売資格をもつ人間は200万人いると言われています。つまり、コンビニよりも圧倒的に数が多いのです。ここで「役に立つ」ことでしのぎを削っても、限界はすぐにやってきます。モノやサービスを広めるフェーズを終えた商品に関して言うなら、そろそろ「意味」を見出す時代と言っても過言ではないでしょう。

次の会議では、自分たちの商品の「意味」としての価値を考える時間をとってみられてはいかがでしょうか。

congerdesignによるPixabayからの画像

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