人は沢山のことを同時にできない
誰でもできる簡単な実験
A4の紙一杯に簡単な計算問題を作ってみてください。たとえば、3+5=とか、13-6=とか、小学校低学年レベルの算数でOKです。これをまずは、何の制限もなく、集中して解いてもらいます。たとえば1分間で何問解けるかを測ってみます。
次に、2人一組でペアになってもらい、片方が計算をします。片方は、計算している人に「質問」を投げかけます。たとえば、「今朝の朝食は何でしたか?」「昨日のより一番最後にしたことは?」とか、少し記憶をたどる必要がある質問がいいでしょう。
こういった質問をし続けながら、回答者は算数問題を同時にやる。結果として、同じ1分で何問解けるか測ってみます。当たり前のことですが、かなり解けた数は減っているでしょう。
何が言いたいかと言えば、人はいろんなことを気にかけて、フル回転ではできないという事です。あれもこれも、と欲張れば、どれもすべて中途半端に終わってしまいます。実際にこの実験をやってみるとよくわかるのですが、計算も精度が下がるだけではなく、質問への回答も上の空、という感じになってしまいます。
一つのことに集中してみる
中小企業であっても、経営上の様々な指標を気にする必要があるのは私にもわかります。新規顧客を増やすことも大事だし、既存客のフォローやクロスセル、アップセルも大事です。しかし、一人の人間に、一つのチームに、あれもこれもやれ、というのは少し無理があります。
そこで一度試していただきたいのは、何か一つ、比較的容易なことに集中してみる、という事です。たとえば、第一四半期は、新規顧客の獲得だけに注意してやるとか、訪問件数を増やすことに注意するとか、既存客へのアフターフォローコールを徹底的にやるとか、そんな簡単なことを最優先して、やってみる、というのが効果を上げやすい目標管理ではないでしょうか。

一点集中のコツ
「結果」より「行動」
この一点集中目標は、できれば結果重視にしないほうがいいと思います。たとえば、ある商品の成約件数や販売件数を重視すると何が起こるかと言えば、モラルの低下です。無理な販売活動を行い、社内のモチベーションは下手をすれば低下してしまいます。なにしろ結果というのは水物です。一生懸命やってもうまくいかないこともあれば、サボっていてもたまたまうまくいくこともあります。
しかし、行動は自分がやるかやらないかだけのことです。何物にも左右されないので、自信の努力が直接反映されます。会社としては結果を重視したいのはわかりますが、逆に、その結果を期待できる行動はどんなもので、どれだけの量の行動があればいいか?をある程度イメージしておきます。
たとえば、100件の顧客を訪問すれば、ある新商品が30個は売れるとします。逆にその新商品を100個売りたいというのが本音であれば、350件程度の訪問件数を目標にすればいいのです。
毎日のフィードバック
今までの行動から考えると、ちょっと無理だろ、と思える行動目標を立てたとします。はじめのころは残りの数が大きいためちょっとしんどいかもしれませんが、常にフィードバックを行うことは重要です。5人のチームがいたときに、「結果」を測れば能力差が出ますが、「行動」を測る分にはさほど能力差は出ないものです。同じフィールドで、適度な競争心を持ちながら取り組むと、ゲーム的な盛り上がりを見せることがあります。成果は毎日カウントダウンし、残りどれだけで目標に達するかを常に意識するよう仕向けます。
さて、こういった行動が、もし期待通りの結果を生まなかったとしたら、そこからはマネージャーの登場です。一定程度の行動が成果を生むという仮説に問題があったわけですから、こんどは行動の質を考えながら次の四半期に再度目標設定していきます。
これを繰り返すことで、試行錯誤を繰り返すプロセスが自然に出来上がってくる可能性は大いにあると思いますが、いかがでしょうか。
