経営者の役割よりも大事なこと
会社の業績を決めるものは何か?
まずはある本の一節をご紹介しましょう。
企業業績の優劣は、経営者の優劣と同一視される傾向がある。確かに長期的に見れば、企業業績のほぼ九割九分は経営者の実力が決める。それについて、私は全く異論がない。しかし短期的に見れば、経営者の優秀さと、ビジネスの成功は必ずしも一致しない。運よくこれから成長する商品に出会えば、どんなにバカな経営者でも、爆発的に儲かってしまうのである。
『60分間・企業ダントツ化プロジェクト 顧客感情をベースにした戦略構築法』神田昌典
この本が正しいとすれば、私たちが思った以上に、「今どんなビジネスをするか?」が重要といえそうです。
さらに言うと、心理学者でありノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマンは、著書『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』の中で、CEOの会社の発展における貢献度はごくわずかだと言っています。その割合が60%。
つまり、五分五分よりたった10%多いだけ。これがCEOと会社の業績の相関である、といいます。
このことを信じるか信じないかはあなた次第・・・なわけですが、考えてみれば経営者がしばらく不在だったとしても、会社は意外と回ることが多いと思います。となると、こういった考えも無視するわけにはいかないような気もします。
時代に愛されるビジネスとは?
皆さんはご記憶があるでしょうか?あのユニクロが全国に展開し始めたころのことを。どの店舗も、週末になると車が行列をなし、店内は混雑し、レジはすごい行列があった時代を。あの行列を見たとき、「ああ、時代に愛されるビジネスとは、こういうものなのだな」と感じたものです。
もちろんユニクロだけではありません。かつてのWindows、Apple社の製品、など様々な商品をいち早く得ようと、今までも、そしてこれからも行列に並ぶ人がいる事でしょう。
目に見える行列の有無はともかくとして、時代に愛されるビジネスは何かと問われると「普通に営業しているだけなのに、次々と顧客あるいは問い合わせの電話が鳴りやまない」状態を私はイメージしています。
こういったビジネスをやっているとき、多少のマネジメントのミスは覆い隠されるぐらい、会社はどんどん成長してしまうことになります。こういったビジネスを手掛けていると、経営者の優劣に関係なく、会社は伸びていきます。

今のビジネスに芽があるのか
冷静に判断してみよう
こういった「時代に愛されるビジネス」を意図的に仕掛けるのは、けっこう難しいものです。こういったことは、往々にして「運」も重要になってきます。この運をコントロールするのは不可能ですから、うまく時流を読みながら、当たるビジネスの周辺にアンテナを貼っておく必要があります。
また、世の中の流れに流されるだけ、というのも経営者としてはかなり危ない印象を受けると思います。波乗りのように、次から次へと正しく波に乗ることができればいいのでしょうが、それは非常に難しいと言えるでしょう。だから、意図的に「時代に愛されるビジネスの中心」にいることは不可能に近いと思います。
ただ、今目の前にあるものが、時代から見放されたビジネスか否かの判断は比較的正しくできるのではないでしょうか。たとえばブラウン管は100年にわたって世の中で広く利用されてきましたが、10年程度で液晶にとってかわられることになりました。ブラウン管に関わるビジネスは、時代に愛されるとはいいがたいビジネスにあっという間になってしまったわけです。
そういった沈みゆくビジネスと、自分たちのビジネスを見比べてみる事。これができるのが経営者であるわけですが、そういった視点を持ちたくないのも経営者。これまで育てたビジネスを捨てたくはないものです。しかし、そこに冷静な判断力が必要となるのは言うまでもありません。そんな視点で今のビジネスを見直すメガ今まさに必要なのかもしれません。
