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何を加えるかより、何を削るか
拡大神話を疑え
会社経営をしていると、なにかと「拡大」したくなるものです。そしてついつい、何かをつけたしたくなります。たとえば、家電製品は、あれやこれやと新しい機能をプラスし、やたらと使いこなすのが難しい製品が増えてきました。そういう時に、とてもシンプルな、基本機能に忠実な製品が出てくると、それが一気にブームになることもあります。
私たちは、売上げを上げるためには、「何かを加える」ということを意識しがちですが、少し「何を削るか」を考えてみてはいかがでしょうか。
限定しないと見えない話
私ども保険代理店となると、保険商品と言えば実は数百種類もあります。普段はお客様のご要望に応じて、その中からピックアップして適合する商品をご案内します。しかし、これだとまったく傾向が見えないことが多いのです。
一方で、お客様の業種を限定するとか、扱う商品を限定することで会社としては非常に効率が良くなります。特定商品の教育で事足りますし、同じ商品ばかりを扱っていると、社員は慣れてきますから、その商品にまつわるいろんなシーンを経験することで経験値はアップします。さらにお客様には、「〇〇保険専門」とうたうことで、相談できる先かどうかがわかりやすくなります。
社内事務や管理コストも下がるでしょうから、実質的にはいいことずくめになります。

機会損失のリスクとのバランス
商品を限定するデメリット
もちろん扱う商品や、お付き合いする業種を限定した場合には、販売機会の寝室というリスクはあります。たとえば、当社が「火災保険専門」となったとして、自動車保険の相談を受けた際の問題です。本来はこういった場合には、慣れない商品は扱わないほうが無難ですが、お断りするのも忍びない。
これを実際にはどうするかというところにおいて、戦略の教科書では会社の規模にもよるでしょうが、それでも専門店を目指すほうが良い、と言われています。専門店化するメリットの方がはるかに高いということです。
何かを成し遂げるには、何かを捨てる覚悟がいります。そして、心理的には加えるよりも、捨てるほうが勇気のいる場合が多いとおもいます。だからこそその決断をする業者は少ないので、差別化がしやすい、ということはあるかもしれません。
「空き家の保険」というニッチなジャンル
当社としては、永年のお客様とのお付き合いもあるので、今更「自動車保険はやめます」なんて言うことは言いにくい。ということで、WEB上の入り口として「空き家専門」的な入り口を作ってみました。多くの方が、空き家の保険について悩んでおられることを知ったからです。すると、全国各地から電話の入る相談内容は、まるで録音された内容を再生されるかのように、みな同じです。つまり、非常にシンプルなマニュアルで対応できることがわかりました。
さらには同質の顧客でおこる、相談のバリエーションもほかの同業者では知りえないパターンも知ることができました。空き家というのは平均4年程度で手放すということで、お客様との長いお付き合いが期待できない部分で商品の選択としては失敗要素もありましたが、入り口を狭めることの効果を実感した実験でした。
試してみるなら
とりいそぎ、簡単に売上を上げたいと思う経営者が試すとすれば、「狭くする」「何かを捨てる」というのは、勇気もいりますがおススメの戦略です。これはたとえば「ランチェスター戦略」と呼ばれる中でも明らかにされていることですが、かなり高い確率で効果を実感できる戦略の1つと思います。
