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どんな時に商品は売れるか?
お客さまの考えを変えることはできない
営業という仕事を、お客様を説得することだと考えている人は多いと思います。私はそれを、なんとも思いあがった考え方だと思っています。それは「お客さん、あなたの考えは間違っていて、私の言うことが正しいですよ」と言っているようなものです。説得とは「説き伏せる」こと。相手を変えようとする行為です。
売るものが、例えば鉛筆だったとしましょう。値段も安いし、子どもがいれば必ず使うものです。であれば、「こちらがおすすめですよ」なんて”説得”されれば、買うこともあるでしょう。しかしそれは、お客様が純粋に考え方を変えたというより、面倒を避けるために「行動を変えた」ということになります。
ここでのキーポイントは、「どうせ何かしら同じようなモノを買わなければならないのだから」というところです。
買う気のなかったものを勧められたときのお客様の反応
街を歩いていたらいきなり呼び止められて、「私、トヨタの車の販売員なんですが、マイカー、買い替えませんか?」と言われて、「なるほど。ちょっと考えてみようか?」という可能性はあるでしょうか?たぶん、ほとんどその可能性はゼロでしょう。
たまたま、車を買い替えたくて、トヨタの車を見たいと思っていた人なら、もしかしたらちょっとは関心を示すかもしれません。(とはいっても怪しすぎるので、ほとんどの方は無視するでしょうが)その状態で、「そうおっしゃらずに、検討してみてくださいよ」なんて言われても、なんでやねん!となりそうな気がします。
普通人は、説得などされたくないのです。
本心は買いたいけど、理性がそれを止めている状態
しかし、例えばその舞台が、トヨタの自動車のショールームだったとしましょう。そんなところに時間を使ってきているお客様ですから、買う気があるかどうかは別として、車に関心があることは間違いありません。お客様は意識の上では「今はまだ買い替えるようなお金はない」と考えているかもしれませんが、無意識においては何とか新しい車に乗れないか?と感じているかもしれません。本能は新車が欲しいけど、理性がそれを制止してる状態、というとわかりやすいかもしれません。
こういったときに、営業担当者の役割は、本当は新車が欲しいというお客様の本心に気付いていただき、理性でがまんしていることが果たして合理的であるかどうかを検証するお手伝い、と言えるでしょう。
たとえば、「今の車は、まだ3年しか乗ってない」という思いをお客様がもっているなら、「だからこそ下取り価格は高めにつけることができるんですよ」と情報という刺激を与えます。ここが難しいのですが、これを「説得する」という気持ちでやれば、お客さまへのプレッシャーになってしまうのですが、「お客様の本心」をあらわにするお手伝い、というつもりでやると意外とお客様の反発を受けることはないものなのです。

営業担当者の役割
お客さまが見たことのない世界を見せる
営業担当者の役割は、お客様を力で説得することではありません。むしろ、お客様が見たことのない世界を見ていただくよう導くのが仕事です。自動車の営業であれば、新しい自動車を乗った時に見える世界がどんなにすばらしいか、お客様がそれをどう感じるかをイメージし、お伝えすることが仕事です。
自働車ならば、試乗。
食べ物なら、試食。
衣服なら、試着。
これらが非常に効果があるのは、お客様がその見たことのない世界、体験したことのない世界の一部を体感できるからです。
営業会議で考えたいこと
お客様の本能レベルの「夢」にどうアクセスするかを考えてみます。そして、それを実現するために、自分の商品やサービスがどう役立つかを議論してみてはいかがでしょうか。
私たちの商品をお客様が手にとった時、お客様はどんな体験をし、どんな思いを頭に描くでしょうか?その時の状況や期待を、購入前にお伝えするにはどうすればいいのでしょうか?
営業の役割は、自分たちの商品やサービスを活用して、お客様に知らない世界を見せ、お客様にこれまで得られることのなかった幸せをお渡しすることではないでしょうか。
