「出版」というマーケティング

企業出版は効果があるのか?

宣伝広告の一手段!?

最近、企業における自費出版が注目を浴びていると言います。そもそも出版は大きく分けて、「自費出版」と「商業出版」に分けられます。ざっくりいうと、商業出版は、出版社が企画や作成、販売について責任や費用を持ち、一般の書店に流通されるもの。自費出版は、主体が著者(もしくは企業)で費用負担などを行い、作成を出版社に依頼したりサポートしてもらうものです。

企業出版と呼ばれるものは、自費出版の1つで、自分の会社や業界に関する本を会社の費用で出版するものです。流通は、自分たちで行う場合と、出版社がもつルートで行う場合とがあります。費用はどこまで出版社がやるかとか、本の装丁などにもよりますが安いものだと数十万円、販売も込みで出版社が責任を持つ場合は700万と言った金額を耳にしたことがあります。

出版社側はこれを、会社の広告戦略の一つとしていかがか?と勧めてくることがあります。その場合、いくつか注意しなければならない点があると思いますので、少し整理をしてみましょう。

効果の有無は「内容」次第?

この手の企業出版で陥りがちなミスは、例えば会社の奢侈を羅列したものであったり、業界における小難しい専門的な知識をひけらかすものであったり、といった内容がけっこう多いのです。ただ、「本」という体裁のものを名刺代わりで配るだけならそれでもいいのでしょうが、できれば集客効果を期待したいもの。

そう考えたときに、単純に「自己満足」な本を出したところで、あまり効果を実感できるものではないでしょう。実は、企業出版において最も陥りがちな間違いは、「誰が読みたいの?」と思うような本づくりを行われているケースが割と多いのです。

繰り返しになりますが「本を出した」という事実だけが必要なのであれば、使う費用は最低限にしたほうがいいと思います。しかし、本をそこそこの数を流通させ、そこから問い合わせなりを引き出したいとしたら、それなりに売れる本を作る必要があります。そしてそのためには、顧客が読みたくなる本を作らなければなりません。

PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

顧客は何に関心を持っているのか?

同業者がよく侵す過ち

私どもの同業者(保険代理店)においても、お金を負担して難しい本を出版しているケースはよくあります。たとえば、相続対策に保険をどう使うか、と言ったものですね。こういったものを見ていて、たしかにそういったことでお困りの方は関心を持って読むかもしれませんが、そういった方々のほとんどは「緊急性」をもった困りごとであることがほとんどです。具体的に言えば、「相続が発生したけど、どうすればいいのだろう?」ということです。

しかし、保険屋さんがアドバイスできるのは、相続発生前の保険による対策がほとんどです。だからそういったことを細々と解説した本を書かれる方が結構いらっしゃいますが、意外とこういった本を買うのは同業者ばかりだったりします。つまり、本来、届けたい相手に情報も、会社名も、著者名も届いていないことがほとんどではないでしょうか。

Amazonレビューを見ているとよくわかりますが、専門性の高い本ほど、専門家同士で買われている様子が見て取れます。

「本を出せるほどの専門家」であるアピールをしたいなら

とはいえ、専門分野を持つ人なら、本が書けるほどの専門家の中の専門家である、というアピールをしたい人もいるでしょう。こういう方は、基本的には発行ロットは最小限にしておくべきでしょう。手配りで配れる範囲での印刷で十分です。書店に並べても、恐らく問い合わせは限りなくゼロに近いと予想されます。

これは大事なことなのですが、たとえばベストセラー作家が「1万部突破」とか言われたとします。(ビジネス書の世界では1万部を突破するのは相当なベストヒット)これは、実売部数が1万部というわけではありません。単に1万部印刷したというだけに過ぎないのです。この後、どの程度返品されるかはこの時点ではわかりません。というより、実売部数を公にするのは出版業界のタブーらしいので、事実は闇の中。

本ってどれぐらい売れるの?

無名の新人の処女作(ビジネス書)の場合は、特別な要素(例えば著者がビジネスの世界で相当有名であるとか、必ず買うであろう顧客リストをたくさん持っているとか)がなければ、初版は2,000部~3,000部くらいの範囲ではないでしょうか。大手の出版社ならもう少し大きな数字になりますが、それだけ出版へのハードルも高くなります(内容の精査が厳しい)。

仮にその2,000~3,000部が上手く売り切れるというのはそうそうありませんから、仮に50%が実際に売れたとすれば1,000~1,500部がお客様の手元に渡ったと考えられます。さて、この数であれば、本という形でお届けするのがよいのか、ダイレクトメールなどによるアプローチが賢明なのか。そんなことを検討する数になってきます。

しかし仮にこれが商業出版として世に出た場合、思いがけず、1万部、10万部というヒットに恵まれる可能性もあるわけです。そうなると、印税を頂きながらより多くの人の手に情報をお渡しできるチャンスを得ることになります。そういった意味からも、「顧客が読みたくなるコンテンツ」の精査が非常に重要になってくるような気がします。

本を出す、というのは確かに難易度が高いため、それがブランディングの一要素となることはあると思います。一方で、違う方法でのマーケティングとの比較も必要となることがあるでしょう。考えようによっては夢のある話でもあります。そういった夢にかけたい人は、検討の視野に入れてもいい一つの分野かもしれませんね。

pixel2013によるPixabayからの画像

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