私がすごく腹落ちした言葉があります。それがこの記事のタイトルにもなっている『差別化とは、違いを作る事』という一文です。元ネタは、経営学の楠木健先生の『ストーリーとしての競争戦略』という本の中にあります。
差別化という言葉をすごく端的に表していて、理解しやすいので、私はこれを読んでしばらくは念仏のようにとなえていたくらいです。
目次
意外と難しい「違い」を作る事
違いの分かる男?
昔、インスタントコーヒーのCMで、違いの分かる男、なんていうのがあったのをおぼえているでしょうか?なんとなく、イメージを植え付けたいのでしょうが、残念ながらあのCMでは、違いが判らない、というのが正直なところ。
実は世の中、「差別化が大事」といいながら、差別化らしい差別化ができていないことが多いような気がします。
たとえば、特定の商品が「10%増量!」といわれて「おー!すげー!」と感嘆する人がどのくらいいるでしょうか。たいていは、「ふーん」程度。いえ、実際のところは、10%増量の文字さえ目に入っていないことも多いのではないでしょうか。
「程度の問題」は意外と難しい
たとえば、Aという車は時速180km/hで走ることができるとします。
一方、Bという車は時速190km/hで走ることができるとします。
きっと、Bの車のメーカーは、開発のしのぎを削って叩きだした10km/hの差なのでしょう。しかし、買う人にとっては、実はどうでもいいというか、たいして気に留めることのない数値であることもあるわけです。
「どうせ、そんなにスピード出したら、捕まるし」
というもっともらしい声が出るかどうかは別にして、自分が普段出すことのないスピードがちょっとやそっと速くてもあまり関係ないことが多いのではないでしょうか。
これ、メーカーは差別化しているつもりでも、実は差別化として機能していないというのが現実ではないかと思います。

差別化はお客様が見て、触ってわかるものがいい
「程度問題」を抜けた「圧倒的」な差別化
もし可能となるのであれば、10%増量よりむしろ200%のほうがいい。
なぜなら、それぐらいの違いになれば、見た目やもってみた感じ、使ってみた感じが「違う!」と実感できるからです。
キャンペーンで安く出すなら、「5%還元セール」なんていうより、「3割引き」のほうが断然いい。
まあ当たり前と言えば当たり前。しかし、そんなことをやっては会社は倒産です。そこで工夫が必要となります。それでも歯を食いしばって、たとえばPayPayなんかはすごい金額のキャッシュバックキャンペンをやっていますね。古くは数万円するモデムを街頭で配ったYahooBBだったり、相当なインパクトを与えるキャンペーンをやって、「あんなことするのはあの会社しかない」というくらいの認知度アップの効果を得ています。
どうせたいして効果のない、ちょっとした差別化をするくらいなら、期間限定・数量限定であっても圧倒的な差別化をやったほうがいい、という好例だと思います。
枠組みを根底から変えてみる
さすがに上記のようなキャンペーンは、体力勝負です。中小企業は大企業のような資金力もなければ、体力もありません。これもまた差別化なのですが、大企業がやってることを真似するのは、かなり危険なのです。なぜなら、彼らのほうが有利な戦術を使っているし、規模もパワーも桁違いだからです。
中小企業は中小企業に応じた戦略が必要です。それは、たとえば小回りが利くという部分でしょう。たとえばハズキルーペで脚光を浴びるハズキカンパニーは中小企業の規模ではありませんが、「眼鏡型ルーペ」という絶妙な立ち位置でビジネスを仕掛けました。眼鏡であれば、医療機器として非常に厳しい規制がある中、ルーペという比較的自由度の高いジャンルでこの世界を席巻しました。
特にこのような規制の多い業界は、お行儀のいい企業が多いのですが、そこでちょっと目立ったことをすると一気に差別化を図ることができる可能性があります。
誰かの真似をし続けていないか?
経営者や経営幹部としては、「差別化は他社との違いを作る事」という言葉を合言葉にすることで、自分たちのアイデアの質を測ることが可能になります。どういうことかというと、同業他社のまねでその場の解決をしているだけで満足していないか?という点です。
差別化を行うには、オリジナリティが必要です。(「程度の差」で勝負する消耗戦以外の場合は、という意味ですが)そのオリジナリティは、人まねからは当然出てくることは難しいです。自分の頭を働かせる必要があります。そういった習慣を作るのは、とても苦しいことなのですが、だからこそ経営幹部は相応の報酬を採ることができるという一面もあるのではないかと思うのです。
そんな方々においては、「他者とどんな違いを作るか?」ということを常に念頭においていただくことが肝要ではないかと思うのですがいかがでしょうか。
