お客さまの「ありがとう」を増やしてもビジネスは成長しない!?

当社では毎朝の朝礼で、「お客様の声」を発表する時間を設けています。具体的に言うと、全日頂いたお客様の声を共有し、記録するために強制的に発表させる時間を作っているのです。そこで一つの話が出てきました。その社員の言葉に私は少し首をかしげてしまったのです。

お客さまは本当は何を求めているのか?

「安心」のお電話

私たちは保険代理店ですが、最近の自動車保険には「ロードサービス」がたいてい無料サービスの一環としてついています。そしてこういったサービスは私どもを通じて手配することも可能ですが、24時間365日対応可能な保険会社のフリーダイヤルにお電話いただくよう、多くのお客さまにはお願いしています。
なぜなら、その方が素早い対応が可能だからです。私どもがあいだに入ったところでお客様にメリットがないことはやらない。当社ではそういう方針で仕事をしています。

そんななか、ある社員のお客様が休みの間にロードサービスを使われたようです。その手配の報告が保険会社から来たのを見て、その社員はお客様に連絡をし、その電話がお客様に安心をもたらした、と発表していました。とにもかくにも「連絡することが大事」だというのです。

Анастасия ГеппによるPixabayからの画像

おもてなしという幻想

実はある調査結果があります。9万7千人もの大規模な調査において、「おもてなし対応」は、顧客ロイヤリティを高めることには寄与しない、という結果です。もちろん、最低レベルの礼儀は必要ですが、それ以上は顧客は求めていないというのです。それよりもむしろ重要なのは、顧客がその商品やサービスの購入・利用に際して「手間がかからないこと」だったと言います。

たしかに気持ちのいいサービスは、その時は幸せを感じさせてくれます。ああ、このお店はいいな、という安心感につながります。しかし、しっかりと頼んだことを淡々とやってくれるお店(しかも待ち時間も、入力項目も最小限)の安心感もさほどかわりません。というかむしろ、リピートするのは後者。前者のお店はたいてい「また行きたいね」と言いながら忘れてしまうのです。

余計なことはしない

ケース・バイ・ケースではあるものの・・・

さて、先にあげた当社の社員のケース。お客様は後から担当者に連絡をもらって、何かしらの心理的な安心に寄与したでしょうか?ああ、確かに、ホッとするかもしれません。けど一方で、私が顧客なら、「既に処理済みのことをなんで今ごろ電話してくるのか?」とちょっとイラっとしてしまうかもしれません。

ここは顧客の性格だったり、属性(例えば時間にゆとりのある人か、働き盛りでいつも忙しい人か)によって変わってくるかもしれませんが、わりと注意が必要だったりします。忙しい人だと、電話がかかってくるだけでムカつくものです。それを、直接的には何の意味もなさないご機嫌伺電話だったとしたら、「もう二度とコイツのところで契約するもんか」と思う人だって出てくるんじゃないかと思うんです。

9万7千件のデータは伊達ではありません。私たちは、本当に顧客の立場にたって、やるべきサービスとやらざるべきサービスをしっかりと見極めていく必要がありそうです。

働き方改革の時代だからこそ

今は人を雇おうとしてもなかなか応募が来ない時代です。そして、今いる社員がいなくなれば、次を雇うのが非常に難しい時代となっています。そんな現代にあって、「余計な仕事」は徹底的に排除する必要があります。

顧客はさほど喜んでいないのに、社内では大事な仕事と認識されている仕事は予想以上に多いと思います。あの仕事辞めれば、一気に時短できるのに、と思う業務はたくさんありますね。

それを思い切ってやってみるというのはとても大事なことです。そうしてその労力をもっと有効なことに振り向けていく。たとえば当社の場合、冒頭の話を鵜呑みにすれば、やたらとお客さんに電話をかける会社になっていたかもしれません。しかし、保険屋にちょくちょく電話をかけてもらいたいお客さんはそう多くはないでしょう。私たちはそういった一つ一つの仕事の本質を問うていく時代に入っているのかもしれませんね。

 

 

参考文献
今回話題になった9万7千人のアンケートデータはこの本で分析されていたものです。

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