営業の効率を上げたい。そう考えたときにすぐに思いつくのは、
・一回訪問当たりの単価を上げる
・営業の行動の効率を上げる
と言ったことではないでしょうか。
人が動くというのはそれだけでコストです。せっかく訪問するなら、その単価は高いに越したことはありません。一方、無駄な訪問をたくさんするより、有効な訪問を少なくできれば効率は上がります。
今回はその際に考えたいことをまとめてみます。
目次
顧客単価を上げる難しさ
クロスセルという幻想
どんな企業でも、お客様がAという商品を購入いただけたら、Bという商品も買っていただけないだろうか?と考えると思います。抱き合わせ販売みたいなことをやってみたり、パッケージにして売ってみたり、というのも工夫の1つです。業種によってはそれがうまくいきやすい場合もありますが、なかなか難しい業種もあると思います。
たとえば、私ども「保険代理店」という業種は、独特のむずかしさがあってたとえば自動車保険を契約いただいたお客様が、常に火災保険もお任せいただけるか?というとそうそううまくいかないことも多いのです。たいていは、何年かで関係ができていく中で、じゃあ火災保険も、という流れで長期的なお付き合いを前提としてセールスを組み立てる必要がある場合も多いのです。
とはいえ、営業に課せられた使命は3年後の売り上げではなく、今期、今月の売り上げであることがほとんどでしょう。その時にどんな工夫ができるかを考えてみましょう。
提案内容は正しいか?
さて、まず考えたいのは、クロスセル(簡単に言うと「追加販売」)の商品の中身です。先ほどの、保険代理店の例だと、自動車保険の次に火災保険・・・という提案ですが、これはある意味、自分本位な提案ともいえるかもしれません。自分たちは保険屋だから、保険を買ってほしいということを主張しているわけです。
専門性のある分野に特化するのは決して間違いではありませんが、買っていただきやすさという意味では少しズレがあるような気がします。自動車保険をご契約いただいたなら、お客様の思考は車に関することが意識されている事でしょう。であれば、車に関する何かしらのご提案ができると、購入いただきやすい可能性があるのではないかと思います。
もちろん初めは、そのあて推量ですからうまくいかないかもしれません。しかし、いくつかの提案を何度か試すことで、だんだんと「自動車保険を契約したお客様は、こういった商品を求めやすい」ということがわかってくる可能性があります。そういったデータをもとに適切な提案を行う、ということが一つの解決策と言えるかもしれません。
営業社員は「訪問先を探して」いる
営業において最大の問題
営業の行動効率を上げることを考えたとき、営業担当者の無駄打ちの多さをチェックする必要があるかもしれません。たとえば、買う意思がないお客様に何度も訪問しているケース。営業担当者にとって、あからさまにサボるわけにもいかないし、かといって購入してくれそうな顧客が思い浮かばない、という時に「買ってくれそうにないけど、訪問しやすい顧客」というのは安心できる憩いの場です。
実際に営業担当者の日報をチェックしてみると、購入額が増えないけど頻繁に訪問している顧客があったりするものです。
これを悪いことだとは思いませんが、そういったことが起こる原因は営業担当者の訪問先不足にあります。買っていただける見込みのある訪問先が枯渇しているのです。
会社として見込み客を集める
そこで常に見込み客リストを潤沢に持っておく必要があります。一つは、長期戦略で「訪問できる顧客」を減らさないことです。それは無理な営業で顧客との関係を壊さないということです。(これは未取引であっても継続訪問できる顧客を増やすという意味でもあります)
さらにいうと、会社で見込み客を集め続ける仕組みを作る、ということです。それはたとえば、定期的なイベントでもいいですし、建築業界や自動車ディーラーがもつショールームだったり、会報や、見学会など様々なアイデアが思いつくと思います。重要なのは、そういったところに集まった人たちの連絡先を入手し、その人たちにとって役立つ情報をイヤミにならない程度に定期発信し、関係を育てていくという方法があります。
既存客に対しては、ニュースレターの発行などで関係作りが可能となる場合もあります。
こういった考え方は、会社が見込み客を集め、セールス担当者がクロージングを行う、という役割分担を行うということがベースになります。ここで有力な見込み客が出てきたとき、営業担当者の見込み客リストに追加されていく、という流れを作ることができると、非常に営業の効率が上がる可能性があります。
会社全体としての仕組みづくり
これまで、どちらかといえば営業は「個人技能」の世界でした。これがある意味、営業の世界が個人の経験だけに頼らざるを得ない状況を創り出してきたのではないかと思います。ある営業コンサルタントは、「先輩について現場で仕事をおぼえさせる」という行為はよくないことだと言います。なぜなら、先輩の営業が常に正しいとは限らないからです。たしかに、満足のいく成績を上げることのできない先輩のマネを後輩がすると、これはなかなか厄介な話となります。
会社組織として営業チームを考えていく、というのは意外とこれまであまり考えられなかったことではあると思います。しかしだからこそ、やり始めると意外と成果が出やすい可能性もあります。ぜひ、会社全体で営業を考え直す機会を作ってみてください。