いまさら聞けないランチェスター戦略って?

私の父の時代、ランチェスター戦略というのがちょっとしたブームになっていたようです。会社にランチェスター戦略を学ぶためのカセットテープがありました。
もともとはと言えば、第一次世界大戦の際、兵力やその種類と闘いの勝敗の相関関係を調べて見出した法則です。これを、経営戦略において活用されたのが今多くの方が知るランチェスター戦略です。

強者の戦略、弱者の戦略

大企業と中小企業ではおのずと戦い方は違う

常識的に考えても当たり前の話なのですが、大企業と中小企業が同じ戦略で戦って勝つことができるでしょうか?具体的に言うと、Amazon対駅前の本屋さんといった構図をイメージしてみてください。便利さと言えば、たしかに駅前の本屋さんはいつもの通勤通学路にあるかもしれません。しかし、小さなお店にある書籍数と種類はたかが知れています。欲しい本に巡り合わない可能性は非常に高い。しかし、ひとたびスマホでAmazonのサイトを開けば、数億店に上る商品種類が今や明日には届きます。本屋さんで取り寄せなんてことを頼むと、明日に手に入るなんてことはまずないでしょう。

幸いにして、本は基本的に定価販売です。ではほかの商品で考えると、単純に仕入れ量が多いほうが安く仕入れることができます。これはなかなか中小企業ではマネすることができませんから、値段競争においても小さな企業は苦戦を強いられます。

しかし多くの場合、そういった「大手企業がやっている事」を真似している中小企業は多いと思います。他に方法が思いつかないからだと思うのですが、そこで非常に参考になるのが、ランチェスター戦略と言えそうです。

弱者の戦略

もともと戦争における研究は、兵の数が少ない闘いでも勝つことがある、ということに目が留まり始まったようです。つまり、弱者がいかにして勝つことができるのか?ということに、かなり大きなヒントがありそうなのがランチェスター戦略。特に日本では、ランチェスター戦略=弱者の戦略という認識が強くあるようにも思います。

大手企業に対抗するためには、大手企業と違うことをしなければならない。そして、その「違いをどう作るか」のヒントを提供してくれるのがランチェスター戦略と言えそうです。

難しいことはともかく中小企業にできることは?

中小企業はゲリラであれ!?

ランチェスター戦略をしっかり学ぶと、かなり学術的な内容もあります。多くのことが公式として記述されており、これはこれで興味深いものがあります。関心があればじっくり学んでみてもいいと思いますが、とりあえずすぐに使えそうな部分だけ抜き出して、ここではお話ししたいと思います。

以下にランチェスター戦略を専門とするコンサルティング会社、戦国マーケティング株式会社のホームページより引用します。
これを、小が大に勝つ3原則と呼んでいます。

①奇襲の原則(ランチェスター第一法則が適用する一騎討ち戦、局地戦、接近戦といったゲリラ戦で戦う)
②武器の原則(武器効率を兵力比以上に高める)
③集中の原則(局所優勢となるよう兵力を集中し、各個撃破する)

特に活用がしやすいと思えるのが、「一騎打ち戦、局地戦、接近戦」といった項目ではないでしょうか。

中小企業にとっての局地戦とは?

たとえば、局地戦というキーワードから思いつくことはどんなことがあるでしょうか。商圏を限定するとか、商品や商材を限定するとか、顧客層を限定するとか・・・。

実際にあった例では、パン屋さん専門の税理士さんという方がいらっしゃるようです。こういった限定をしていくと、そもそもパン屋さんではどんな悩みがあるのかがわかるようになったり、業界の中での立ち位置が作りやすくなったり、パン屋さんならではの税務処理の工夫が出来たり。実際にこの税理士さんは確か、レジのお金の管理について非常に面白いアイデアを持っておられ、それをもとに多くのパン屋さんのクライアントを獲得されたようです。

私たちは、商品ラインナップを増やすことが売り上げを上げることに不可欠と信じ切っていますが、これは大企業の取るべき戦略です。ランチェスター戦略においてはむしろ絞り込む方向が重要とされています。しかも、狭い分野を深く掘り下げることで、他の業者との明確な「差」を作ることが可能になります。「差」を作るというのはつまりは「差別化」です。

逆に考えると、中小企業は大企業のようなリソース(ヒト・モノ・カネ)がない分、あれもこれも、というわけにはいきません。中途半端にあれこれやるよりかは、一つのことに集中しましょう、というのが基本的な考え方と言えるかもしれません。

競争戦略としては評価は高い

「競争」の時代は終わった?

このランチェスター戦略は、私が知る限り何人かのコンサルタントの方が「再現性の高い戦略」とおっしゃっていたのを記憶しています。そういう意味では、やれば効果が上がる可能性が高い、ということなのだと思います。

一方で、「競争戦略」という考え方に近年異を唱える意見が多いのも事実です。特に、同業他社ばかりを見ていると、とんでもないことが起こります。例えば書店の例でいえば、コンビニが雑誌を扱い、郊外型やショッピングモール内の大型書店があり、Amazonや電子書籍と言った昭和の時代では予想もつかなかったようなライバルが出現しています。また、出版業界もいろんなトライアルをしているので、そもそも「本を書店で買う」という基本認識すらいずれなくなってしまうのかもしれません。

そうなるとライバルと比べて・・・という話ではなくなります。原点回帰、つまり今の顧客が何を求めているのか?という視点を持つ必要があります。これはランチェスター戦略を否定するわけではなく、弱者の戦略として顧客に接近することで顧客の本当の想いをくみ取ることができる立場にたてる、ということにもなりえます。

どんな形であるにせよ、自分たちがどこへ向かうかは、それなりに考えて行動することが必要なのではないかと思います。

 

画像提供元:Web DonutによるPixabayからの画像

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