その先になにがおこるか?
正常性バイアス
台風や津波、火災や飛行機事故なので、時として首をかしげるような状況が目に留まることがあります。たとえば、韓国の地下鉄において、車両火災が起きてたくさんの死傷者が出た事故がありました。その時の社内の様子を映した映像を見てびっくりするのですが、周囲が煙で充満していく中、誰一人慌てて席を立とうともしないのです。誰も車両から逃げなかったのです。
実は、災害においてこういったことはよくあるそうです。第三者的に見て今すぐ逃げるべき状況下にありながら、そこにいる当事者は誰も逃げないという事が。これを正常性バイアスというそうです。なんだかおかしいな、とは思うものの、まあ自分が慌てて逃げ出すほどのものではないだろう、という思い込みを持ちがちなんだそうです。自分だけは大丈夫、という根拠のない考えが、災害時に人の脳内を支配することがあるようです。
釜石小学校の軌跡
以前、NHKで特集され、書籍化もされていますが、釜石小学校では3.11のとき、津波の犠牲者がゼロだったそうです。なぜかというと、何かが起こった時、友達や家族のことを考えず、とにかく高いところへ上るよう、刷り込まれていたからです。普通は家族が心配だから、まず家に帰ってから・・・という行動を示すことが多かったり、子どもが心配だから小学校のようすをみてから・・・という非難を後回しにするケースが割と多い。しかし、この地域では、「誰もが山に登る」という前提で訓練をしていました。だから、津波のときに誰もが迷いなく、即座に高いところにのぼったそうです。その結果、誰一人津波に巻き込まれることがなかったのだとか。
身を守ったのは何か?
緊急時に何が起こるのか?
釜石小学校のケースで考えると、津波がおこった時、かならず家族や友人を心配して非難が遅れるであろう、という想定が事前にあったことで、「当日はそのような思いを持つことで非難を遅らせない」という手をあらかじめ打つことができていました。避難訓練の際、「家族を迎えに行ってはいけない。即座に非難を」という考えが叩き込まれました。
実は、会社におけるリスクマネジメントも、同様のことがおこります。たとえば、ある企業では暴風雨があり、倉庫に浸水してしまいました。事前に社員たちは、「もしかしたら浸水するかも」という会話を交わしていたにもかかわらず、「まさかねえ」と何の対策も打ちませんでした。ほんのわずかな土嚢を積み、在庫の商品を少し高いところに挙げるだけで防げた災害を、彼らは防ぐことができなかったのです。
こういったケースでは、正常性バイアスとの戦いになるので、だれかが、「起こる前提で対処すべき」という事をあらためて現場で徹底する必要があるのでしょう。
リスクマネジメントは保険に入ればいいというものではない
実はこのケースにおいて、このお客様は保険でそこそこ金銭的な補填はありました。しかし、倉庫の清掃や、商品の廃棄費用、そういったことに手間をかける時間や、お客様への配送を待たせてしまった時間など、帳簿には表れないものも含めて、意外と大きな損失を経験しているものです。そしてそれは保険で賄われないものも多いのです。
実は、保険というのはリスクマネジメントにおける最後のとりで。大事なのは、被害を起こさず、また、拡大させないための日ごろの想像力と実行力が大事なのです。
さて、インフルエンザやコロナウィルスの拡散が心配される昨今、社内ではどんな対策を取られますか?
