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同業他社の事例を真似するということ
同業他社のベストプラクティスは未来を示していない
業種業界によって、同業他社との関係性というのはずいぶん違うと思います。わたくし共の保険業界で言うと、比較的同業他社とのコミュニケーションというのはそこそこあるほうだと思います。そんな中で比較的多いのが、「同業他社で行う勉強会」というものです。たとえば、「ベンチマーク」と称して、同業他社同士事務所訪問をすることもあります。
例えば飲食店や店舗運営なんかにおいても、許可を得て行うかどうかは別として、同業他社の偵察などをすることはけっこうあると思います。こういった場合、業界におけるベストプラクティス(参考となる好取り組み事例)を真似して取り入れよう、という機会になるのだと思います。ただ、気を付けたいのは、それはあくまで「現在」のベストプラクティスであり、未来のそれではない、ということです。
他社に後れを取らない…?
同業他社がやっているいいことを真似するというのは、今まで思いつかなかったアイデアを他社の取り組みをヒントにして、自社のステップアップを図る要素にはなると思います。だから悪いことではないですし、業界の底上げには一役買うこともあるでしょう。
しかし一方で、それはあくまで、その会社が過去から蓄積してきた経験やノウハウの集大成。つまり、それはその業界の現在にはそこそこマッチするものであるかもしれませんが、未来において効果があるものとは言い切れません。
逆に言えば、どうせマネをするなら、「成果が出たもの」ではなく、「まだ成果が出ていないもの」をマネするべきではないでしょうか。なぜなら、成果が出たものはあくまで過去のものであり、横並びするのが限界地です。逆に、成果が出ていない者なら、そのことでトップに躍り出る可能性がある、と言えるのではないでしょうか。

未来を考えるのは「組み合わせ」
他業界の事例ならば
「発明」というのは、既知の何かと何かを組み合わせたものと言われています。何もないところからまったく新しいものが生まれるということは、そうそうないそうです。とすると、その組み合わせのバリエーションというのは、同業者という狭い世界よりむしろ、多業種にたくさんの事例があることがあります。
たとえば、他の業界が損害保険業界を見たとします。わかりやすく自動車保険としましょう。自動車保険は消耗品です。1年契約で、1年を終えるとそれは価値がなくなります。そして、この業界には保険の満期(つまり消耗品として効力が失われるとき)の2カ月ほど前に、「もうすぐ切れますが、来年もいかがですか?」という案内がお客様に届くようになっています。さらに私たちは、お客様に確認をとり、次の消耗品である自動車保険を受注するわけです。
この仕組みで、毎年、かなり高い確率(当社においては90%以上)で翌年もご購入いただくことができます。(つまり、昨年と近い金額の売上が見込めます)
これ、様々な物販で応用できるのではないでしょうか?健康食品なんて上手にやっていますよね。前に勝っていただいたものが切れるタイミングで次の購入のお誘いがあるケースが多いと思います。それでもまだまだそれをやっていないところもあるわけです。
他業界の応用はいったん「抽象化」が必要
今、ビジネス書の世界で一大旋風を起こしている、前田裕二氏の「メモの魔力 The Magic of Memos 」における最大のポイントは、
①事実の認識
②事実の抽象化
③抽象化したことを転化する
という三つの流れだと考えています。
異業種の事例は、この「抽象化」を行わずして応用できません。逆に言うと、抽象化することで「自分の頭を動かす」ことになるのです。その過程が非常に大事だと私は思っています。
先の事例で言うと、自動車保険には満期が近づくとその旨、顧客に案内が届く、という仕組み。このことに関して、自動車保険を「消耗品」という人はたぶん私意外にはあまりいないでしょう。これは税務上、損金算入されることから、自動車保険というものを抽象化した概念です。「自動車保険というものは…」という主語ならば応用のできない話が、「消耗品というものは…」という主語にかえれば、消耗品を扱う業者さんは多数いらっしゃると思います。これをその業種業態に合わせて応用していけばよいのです。
意外と応用されていない異業種の「いいところ」
こうやって見ていると、他業種のいいところをマネできていない業界は沢山あります。それは、場合によっては法律や規制でできないケースもあると思いますし、やってみたけど効果が出なかったということもあるかもしれません。それでもまだまだ工夫の余地があり、そういったところから新たなビジネスモデルが生まれることはよくある話です。
そういった頭の体操がおそらくこれからの時代を生き抜く大事な資産になってくると思います。社長一人で考えるのもアリですが、社内でそんなことを考える機会を持ってみてもいいかもしれませんね。
