あるセミナーに参加して・・・
会社の目的
一昔前、会社の目的は売上を上げ、組織を大きくし、株主に還元する。
そんなことが当たり前のように信じられていました。
例えば、「実は売り上げ目標は持っていない」とかいうともはや経営者失格のレッテルを貼られたものです。昭和から平成の時代は、「売る事」、すなわち「自分たちの商品を広める事」が目的でよかったのです。
しかし、今はそれではうまく回りにくくなってきました。ある経営者が、入社3年目の社員にこんなことを聞かれたそうです。「私たちの会社は、どこへ向かっているんですか?売り上げアップとか、社員を増やすというのはわかりますが、それはなぜ必要なんでしょうか?」
社長はしどろもどろ。後日談ですが、その社員は「この会社では未来が見えない」と辞めていったそうです。目にかけていた社員だけに、社長はしょんぼりした様子でした。

一つに収まらない業種
私たちは保険販売の仕事をしていますが、ある時に気付いたことがあります。それは、ビジネス向けの保険(たとえばPL保険などの各種賠償保険や、ビジネス全体を総合的に補償する保険)のお見積もりを出させていただく際、業種を確認します。
この業種分類は、総務省の日本標準産業分類あたりを参考にしていると思われます。業種をある程度限定することで、業種ごとにどの程度のリスクがあるかのデータをとり、それを保険料に反映していると考えられます。
たとえば、スポーツ用品の小売と、衣料品の小売では保険においては保険料が違うことがあります。昭和の時代であれば、スポーツ用品店はスポーツ専門で、たまにユニフォームなどの注文を受けて販売することはあっても、グローブやボールテニスラケットしか扱っていない場合がほとんどでした。しかし、今は逆に本当のスポーツ用品しか扱っていないお店の方が少ないくらいです。
昔は商品が中心だったのが、今はお客さんの目的に合わせて店舗設計や、仕入れ商品の種類が変わってきたということでしょう。
また「製造業」というジャンルもまた、あいまいになってきて、製造と販売がひとまとまりになっていることが多いと思います。それほどまでにビジネスのあり方は比較的短い時間単位で変わっています。かつては「このお客様は、〇〇業のお客様です」と言えた顧客が、もはやそう言い切れない業態になっていることは少なからずあります。
業界の未来は業界の中には見えない?
業界を破壊するのは業界の非常識
もちろんすべての業種が「脱・〇〇業」を掲げようというつもりはありません。大事に守り、育てるべき伝統もあるでしょう。しかし気をつけないといけないのは、そういった「業界」を破壊するのは、たいてい異業種です。
コーヒー飲料の業界がわかりやすいですね。昭和時代には、JAZZ喫茶や、カラオケ喫茶など、様々な特徴あるお店に、こだわりある顧客を呼び込んでいた時代がありました。それが一般化し、喫茶店となり、地域のなじみの中で行われたビジネスとなりました。しかしそれを破壊したのは、一つの流れはマンガ喫茶やネットカフェ(これはある意味JAZZ喫茶やカラオケ喫茶のようなマニアックなそうを取り込んでいるのかもしれません)、そしてちょっとおしゃれなカフェ、そしてコンビニのイートインコーナーや、ファミレスのドリンクコーナー。もはや混戦状態です。
こういった流れを例えば、「喫茶店業界」しか見ていなかった人には、想定できなかったのではないかと思います。業界の外には業界内の人間にとって「これが普通」と思っているおかしな業界内限定の常識を疑うことからスタートしていることが多いと思います。その常識を覆す考えは、基本、業界の外からしかやってきません。だから、どんな業界であれ、その未来は業界の外を見なければ見当たらないのです。

外の世界を知るためには
これまで、トコトン専門分野を深く追求してきた経営者は、そろそろその専門分野という近視眼的なメガネを外す必要がありそうです。そこは誰かに任せて、広い世界を見て、解釈して、かみ砕いて、社内に伝える必要があるのではないでしょうか。
これまでは、業界内の人脈やコネが大事だったかもしれません。しかしこれからは、業界内での視野・視点が必要なのではないでしょうか。
セミナー徴候を受けて損なことを考えたのですが、いかがでしょうか。