どっぷり業界につからない「普通の人」であるべき理由

企業の経営者ともなれば、その業界、商品、サービスにどっぷりとつかりがちです。たいてい、自社商品を売りたければ「自社商品を愛せ」と言われます。これが間違いとは思いませんが、一方で、経営者は「普通の人」の感覚を忘れてはいけない、と言います。

それはどうしてでしょうか?

あるネット企業の社長はあえてリテラシーを高めない

マニアになってはいけない!?

たまたま興味深い本に出合いました。実験思考 世の中、すべては実験』(光本 勇介) という本です。面白いのは、この本は原価で販売されています。そして、その内容への関心度や、その他の特典などを含めた値段をクレジットカードで追加支払いできる仕組みになっています。

上手くいくかどうかはわかりませんが、本という媒体の新たなビジネスモデルを模索する実験としては、とても面白いものだと思います。この本の著者は、現金化アプリ「CASH」のリリースや、STORES.jpなどの立ち上げと言った、ネットの世界では割とよく知られたサービスを次々とリリースしている仕掛け人でもあります。

このかたが本書でいっていることに感心したのは、「自分達はインターネットでビジネスをやっているから、ネットのリテラシーが高いとダメなんです」という考え方です。

なぜその世界の「プロ」になってはいけないのか?

たとえば会社のサービスに対して、非常に高い知識と経験を持った人が社長をやっているとします。そうすると、その道のプロであるがゆえに、「普通の人の感覚」を忘れがちです。たとえば、インターネットの世界では当たり前のアプリの活用や、検索のスキルなんかも、使えない人は依然といるわけですし、知らない人もたくさんいるわけです。そういった人の「困った」を知ることができるのは、リテラシーが低いから。だから、社長がその世界のリテラシーが高くなってはいけないのだと言います。

社長が普通の人だからこそ、その業界や商品の持つ問題点が見えるし、それを「仕方がない」で終わらせられなくなります。業界の常識に迎合しないことが、経営者には必要だということのようです。

そういえば・・・

保険会社の新人社員に必ず言っていたこと

私の会社は保険代理店ですが、たまにメーカーである保険会社の新入社員さんが、当社に一時的な「留学」をされるケースがありました。1週間程度なのですが、私たちの実務を経験するという機会を作っておられるのです。

そこで私は必ず新人社員さんに行っていたことがあります。それは、「今の普通の感覚を忘れないように」ということでした。これは、当社で直接雇用する社員にも必ず言っています。

そんなことをあえて言うというのは、私自身がこの業界のオカシナ常識に相当違和感を持っているからだと思います。いえ、別に保険業界だからというわけではありません。たぶんどこの業界でも同じように、変な業界常識をお客さんに強いてるケースはたくさんあると思います。

しかし、そんなアドバイスも、持って数か月です。数か月後あう人たちの多くは、すっかり業界人。ちょっと寂しい思いを感じることもあります。

実務家と経営者

実務家については、とにかくその世界の情報にどっぷりとつかる必要があります。いくら業界の常識を疑え、と言っても難しいのはそういうところだと思うのです。業界の知識を深めれば深めるほど、顧客と乖離した常識が生まれた背景はなんとなく見えてくるし、それが単なる思い込みのケースもあるわけですが、それを正すことのむずかしさがよくわかっているわけです。
実務家としては、そういったことを変えていく以前に、目の前の現実に対処していくことが求められます。「筋が通らない」といって叫んでいても、顧客のデメリットは避けられないとしたら、違う方法をしっかりと自分なりにもっておく必要があります。それは業界常識を変えるという方法ではなく、業界の常識をうまく活用するという方向感になるのでしょう。

しかし、経営者はそこから一歩踏み出す必要があります。それはもう少し対極的なものを見方をし、そういった業界と顧客のギャップを埋める仕組みが作ることができないかどうか?ということを考えるのが仕事の1つです。たいてい、業界を変えるのは「よそ者、バカ者、若者」と言われますが、それはこういった業界の常識を平気で踏みにじることができる人、と言い換えられるでしょう。

経営者は実務者とは違った視点が必要なのだと考えられそうです。

職人を選ぶか?普通の人を選ぶか?

ここが経営者としての、スタイルの分かれ目だと思います。
職人であり続けたい人は、それはそれでアリだと思います。
ただ一般的に、事業規模はあまり大きくはならないことが多いので、いかにして高付加価値を保てるかを考えることが大事ではないかと思います。どちらかと言えば、自分たちの技術を過信しがちです。その技術を顧客が求めているだろうか?という視点を常に持っておくよう注意すれば、効率の良い会社になる可能性は高そうです。

一方で、会社を大きくしたいなら、ある程度職人集団とは違うスキームを考える必要があります。そういったときに、社長は「普通の人」であることが求められるのではないかと思います。

あまりに大雑把すぎる分類ではありますが、そこはご容赦ください。とはいえ、考え方の根底における参考程度にはなるのではないでしょうか。

人気記事

レンタルスペース

レンタルスペース

会社案内

会社案内

メルマガ登録

メルマガ・旬の経営情報
ページの先頭へ戻る